バンクリフ・世界一不幸な少年?

 バンクリフについては、小説『十四の眼』の方に、考えていたことをだいぶ、つぎこんでしまったしまった為、トークしてもネタが被っちゃうかな……と、正直迷っておりました。一度は、トークの方はなしにしようかととも思ったんですけど。
 でも、「思い入れキャラトーク」に挙げたメンバーの中でも、バンクリフはとりわけ地味というか、あのメンツの中では「パーティに入れてもらってない度ナンバー1」だろーなと思ったら、やっぱりトーク、書いとこうという気になりました。早い話が布教活動。「バンクリフ・ファンここにあり!」という宣言というか、数少ない同好の士が、喜んで下さったら幸いだなと思っております。
 と言っても、いつも通り、自分の好き勝手なことしか書いてないんですけど。

 バンクリフって、参入時期は悪くないんだけど、固有のイベントが少ない割には、キャラ的に色モノ(ラッキーダン辺りに代表される、人外魔境系キャラたち)でもない辺りが、今ひとつ地味で使われにくいポイントなのかなあ。見るからに「ヘン」なキャラだと、いっぺん使ってみたくなるのがゲーマー心理だと思うけど(←そうか?)、そういう要素のない分、インパクトには欠けるかも知れない……。しかもバトル的には、さほど強いって訳でもないですし。
 (余談……クロスのサブキャラのイベントって、「参入時」「レベル7固有技取得関連」「別の次元の自分と出会った時」の3種が基本で、重要度が高いキャラほど「それ以外」のイベントが増える感じですよね。んで、我がバンクリフ君の場合、レベル7固有技がレベルアップ習得なんで、イベント1個損してるんだよね……。ま、「別の次元の自分」がいないキャラも結構多いんで、「固有イベント実質2件のみ」って、実はスタンダードなのかも知れないけど。閑話休題。)
 確かにステータスはあれなんですが、先天属性緑&強攻撃は全体攻撃というのはオイシイっすよ!育て方次第では、ザコ敵キラーとして充分使えます。「イーグルアイ」でのサポートをよろしく。個人的には、ブーメランという武器自体が好きだったもので、余計にひいきして使っていた部分があります(あの、「ヒュオッ!」っていうSEが好きなの……)。

 ホームとアナザー、それぞれ立場が違う、ふたりのバンクリフが存在する訳ですけど、やはり好きなのは「性格悪そうな」ホームのバンクリフ。がめつい少年。口の悪いやつ。でも根は素直で、ちょっと照れ屋。……うわーッ、ベタだわ!ベタ設定だわ!!と思いつつ、こういうパターンには弱いのだった。
 というか、「王道パターン」っていいよなあ、とバンクリフのイベントを見て思ったりもしたのです。何はなくとも親子の愛情。子供が一番欲しがるものは、何でも買ってくれるお財布なんかじゃなくて、一緒に語り、笑ってくれる親の姿そのものなんだよ……なーんて、こう文字にしてみると、ほんとにベタで照れ笑いが浮かんでしまうのですが(←何故私が照れる)、でもちょっといいよね、こういうの……。

 「貧しくとも心に錦」「金はあっても大切な何かを失ってしまった」って対比そのものは、もうほんとに使い古されたパターンだし、ある種のうさんくささを感じなくもない。画一的な固定イメージ、そのものがね……。貧乏のあまり、心をすり減らしてしまっている人だっているし(テレビの「大家族」モノを見ると、そこはかとない寒さを覚えるのは私だけか)、お金持ちにだって、立派な人間はたくさんいる筈。「富(物質的繁栄)これ皆、堕落」という発想にはどうも、ある種のプロパガンダくささが漂っている気がしてならないのだった。確かに「金の使い方を知らないお馬鹿」ってのも、腐るほどいるけどね……。
 その意味で、バンクリフの一連のイベント……参入して、アナザーの父と自分の姿を見、再びホームに帰って来て、父にさりげない報告(と、たぶん裏に込められた「愛情もって育ててくれた」ことへの感謝)をする……という流れは、この手の「お説教」になりかねなかった訳です。というか、表現次第では絶対、そうなってたと思う(現状でもそういう要素がゼロか、と言われたら、テーマとして含まれてることは確かだろうし)。
  特に仲間参入イベントに、それを強く感じるんですが……台詞回しが全体にとても良くて、バンクリフの心理にすうっと寄って行けるような流れになってたのが、一番この「説教の臭み」を感じさせなかった勝因なんでしょうね。ふたつの世界の立場違いも、「金持ちアナザー→貧乏ホーム」って順番で見せてるのもよろし。逆だと「貧乏でも家族が……」というテーマが、えらいひがみっぽく響いてしまうので。

 旅立つバンクリフが、携えていく三つの宝物……貯金箱と、絵の具と、そして母の形見とも言うべきひび割れた貝殻。父の描いた絵の「裏側」に隠されたそれらを、次々取り出して見せるシーンの、言葉がとても好きでした。「三つのアイテム」そのものにも、彼らしさが滲んでて、微笑ましい。父の志と、母の記憶と、この「家庭」のあった場所=家を守る為に、バンクリフ自身がおそらく必死に算段して来ただろう財産。夢と現実、過去と現在がきれいに入り混じったバンクリフの「今」を、それらがあざやかに映し出す。
 金持ちになった、アナザーサイドのバンクリフの父にしても、変わっていくきっかけは妻(バンクリフの母)の死にあって、結局そこからの立ち直り方の如何によって、「贋作でひと財産築く」アナザーと、「心を保って自分の絵を描き続ける」ホームの差異が生まれている訳です。このエピソードなんか、さらっと流れてしまいがちだけど、よく考えるとファルガの「分岐点」なんかに通じるものもありますね。
 その、それぞれに潜んでいるだろう絶望と希望を、子供ながらにバンクリフが目撃していく、という、あれはなかなかシビアなイベントのような気もします。ホームに戻っての、父に対する言葉少なな「報告」とか、アナザーの自分に対する「オタクのぶんも、ボクが苦労するから」という台詞とか、幸福って何だろう、家族って、生き方って……自分の中で、さまざまな答えを反芻させているのだろうなあ、としみじみ見入ってしまうのです。

 大人びて見えて、まだ14歳、ようやく「世界」への参加を許されるようになった年齢にして、彼が目撃することになる数々の悲劇。人と世界の運命と、断ち切る意志と。……死海にて、破滅した未来を目撃する人間キャラではバンクリフが最年少なんだ、という指摘は『十四の眼』にも書きましたが。他のキャラとはすこし違う視点で、あの物語世界を語り得るキャラクターなんじゃないかと、私はひそかに思っています。
 しかも彼が、ホームサイドのテルミナの住人であるというのもね、結構オイシイ要素じゃないかと。ホームのテルミナは、現在はパレポリ軍に制圧されてるけれど、それは3年前のこと。蛇骨大佐たちが死海に渡るまでは、アナザーの現状とさほど変わらない環境だったんじゃないかと思うんです。毎年、あの時期には「蛇骨感謝祭」があって、領民も平和に呑気に暮らしてて。現にレナはテルミナのエレメント屋のリサと友達で、アナザーで仲間になるレナを、ホームのリサのところに連れて行くと、リサは(アナザーの彼女とさして変わらない態度で)レナを友人として扱います。
 前置き長いけど……要は、ホームのバンクリフは、過去どっかでセルジュと出会っている可能性なんかもあるなあ、と思ったりしたのです。「友達」とまではいかないにしろ、例えば感謝祭でテルミナに遊びに来ているのを見かけたとか、レナに付き合わされて買い物に来てるところに出くわしてるとか。
 それで、ゲーム中には最初、ヤマネコと化したセルジュと「初めて」出会って、仲間になる。その後セルジュが、自分の本当の姿を取り戻した時に、「オタク……あの時の、あいつだったのか」みたいな驚きがあったりしても、おもしろいなと思って。というかこれ、『十四の眼』に入れ込むかどうか、結構悩んだネタだったのですが。テーマがバラけ過ぎちゃうんで、結局使わずじまいになった小ネタなんですが、結構お気になので今ここに書いてみた。
 他にも、ホームの蛇骨組の誰かと親交があったりとかね。3年前……11歳当時でも、たぶんバンクリフは基本的にあのこまっしゃくれキャラだと思うので。カーシュやマルチェラと顔見知りとか、リデルの肖像画制作をバンクリフの父が依頼されたけど断ったりとか、色々とエピソードは思いつくのですが、もしもそういう因縁が、あったとしたら……死海でのあの「対面」って、ものすごい意味を持ちますよね。
 ザッパやラディウスはもろに「関係者」なので、あの辺り強い感情があるのは当然なんですけど、テルミナという「蛇骨家の本拠地」の住人であるバンクリフにも、そういう「語られないエピソード」があったとしてもおかしくはない。こういう、余白つっこみ放題で遊べるのが、クロスの一番楽しいところですよね〜。バンクリフの場合、適度に「部外者」的な醒めた視点で事態を眺めつつ、でも根はたぶん、「困ってるやつはほっとけない」タイプだと思うので、セルジュのエピソードに添わせる形で「語り手」やらせたりしたら、おもしろいものができる気がします。
 ……ということで書いたのが『十四の眼』だったりするのですが。あの後、「今まであまり使ってなかったけど、次のプレイでは……」という感想を幾つか頂いたりしたので、「バンクリフ布教!」という私の野望も、多少なりとも達成できたようです。

「ごきげんよう、セルジュ。まあ、もう二度と会うこともないだろうけどね。そう思うとちょっとさびしいかも、な。ほんとちょっとだけ……、だぞ。」

 最後の最後まで、彼には憎まれ口を叩かれて終わってしまうんですが……時間軸が巻き戻った以上、「セルジュと旅したあのバンクリフ」が、「あのセルジュ自身」と出会うことは、たぶんもう二度とない。
 その事実を前にした微妙な感情を滲ませたことばに、家に戻った彼が、父の作った「エルニド・ブルー」で、あの晴れ渡る死海跡や、神の庭や、再生した星の塔の夜明けを描く姿を、想像したりします。
 ただ、セルジュがこれから生きてゆく「自分の時間」のなかで、再び「バンクリフ」なる人物と出会うことは可能なはず。寡黙なセルジュと、こまっしゃくれなバンクリフの取り合わせって、なんかえらく微笑ましいというか、いいコンビの気もするので、ぜひいつかどこかの世界で、再会を果たして欲しいと思っていたりするのです。


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