カーシュ・三枚目で二枚目な……

 かつてアカシア龍騎士団を束ねていた四天王筆頭・ダリオの亡き後、騎士団をまとめて来た、現在のリーダー的存在。普段の言動から見ると、「……マジ?」って感じの設定なんだけど(←超失礼)、ステータス的には確かに、龍騎士団随一の使い手、というのは嘘じゃない。しかもよく見りゃ顔もいい。長髪の偉丈夫で、正統派美形顔なんだよねえ。
 部下の人望も(ダリオとはちょっと、違った意味で)厚そうだねえ。ソルトン・シュガールコンビとのイベントもそうだけど。結構あれで男気にあふれるタイプだから、失敗とかしても「馬鹿野郎!」と一発怒鳴って、それでノーカンにしてくれそうだ。ガチガチじゃない上司ってのは、組織発展のカギですからね。無茶で乱暴ではあるけど、しっかり頼れる兄貴のような感じで、実は今の龍騎士団にとって、カーシュの存在は屋台骨なんじゃないかなあ、と思ったりするのです(マルチェラはまだ9歳だし、ゾアは自分の職分を黙々こなす、職人みたいな奴ですからね。組織の束ね、ってのは難しいと思う)。
 なのに……なんでリデル様は振り向いてくれないんですかねえ。いやあ、女心ってのは難しいものです。やっぱファッションがイカンのではないか。占い婆さんにも言われてたけどさ。……つーか、あのド派手ファッションもさあ、リデルお嬢様の目を引きたいが為に、チョイスしたんじゃないだろうな、まさか。確かに目は引いたかも知れないけどさ、ちょっと「注目」の意味が違ってると思うよ、カーシュ……(またカーシュご本人が、結構喜々としてあの服、選んでそうなんだよなあ)。

 冗談は、ともかくとして。
 ……はじめから勝ち目のない勝負、というのがね。カーシュの色々とつらいところなんでしょうね。ダリオとリデル、というカップルは、余人がどうこうと関わらないところで、完全に成立してしまっていて。別にカーシュ自身が、ダリオに比べて何処がどう劣っていたとか、二人の内のどちらを選んだとか、そういうことではなく……ただ、ダリオとリデルが、恋に落ちた。現実はそれだけのこと。カーシュの介入する余地は、はじめから、全く何処にもなかった。
 逆にこういうのって、つらいよね……。これがもしも、ダリオとカーシュがはっきりと張り合って、競い合った結果として、リデルがダリオを選んだとか言うのなら……その方が、却ってカーシュ本人はすっきりしたかも知れない(その場合、その後の三人の関係というのは、確実に変わってしまったと思うが……カーシュは龍騎士団を去ってしまう気がするけどさ)。でもそうじゃない。争う余地もなくふたりは結ばれてしまって、しかも誰が見てもお似合いのカップル。
 言い出し損ねたとか、出遅れたとか、後になってから思うことは、カーシュ自身には色々あっただろうけどね。実際、少年期から完全に、ダリオはカーシュに先んじてたし。あのシーン自体は、カーシュ側から見た回想なんで、カーシュの主観も入ってるんだろうけど……割と無意識に振舞っている感じのダリオの方が、よりリデルの心を捉えてしまったというのは、皮肉な話ではあるな。カーシュは意識しすぎたんだろうか、いろいろと。
 「ごたくは抜きにして、結局はプッシュした方が勝つんだよ」なんて、女性の立場から言っても、私は絶対認めたくないが――こういうのは、ままあることですか?>口下手な男性諸氏。
 ダリオとリデルが結婚を報告するイベントの、無邪気すぎる残酷さ。あの、青リンドウをばさっと投げ捨てるシーン……胸にぐさっと来ますね……。またあそこの「動作」のタメが凄いんだ。ここと、水龍の島・夜イベントのキッドの動作、それからゼルベスでファルガが葉巻をとって一服するシーン、この3箇所のイベントポリゴンは、おそろしいぐらいリアルな動作で、ホントに息を呑みましたね。閑話休題。

 それでもダリオはカーシュにとって親友で。カーシュは口をつぐむことを決める。けれどグランドリオンの事件があって……あの辺りもね、それまでの伏線がひっくり返されて、実は魔剣に憑かれたのは、ダリオの方だったというのは、なかなかにおもしろい。当然あってしかるべき構図……カーシュが憎しみをもってダリオを斬るのではなく、ダリオの方がカーシュを殺そうとした。ダリオにも、カーシュに対する憎しみがあった。
 普通は考えられない構図ですよね。負けたのはカーシュなんだもの。リデルのことにしろ、剣の腕だって、カーシュはダリオに一度も勝てなかったと告白している。それほどまでの「完全な勝者」であるダリオが、何故カーシュを憎むのか?
 答えはたぶん、ひとつしかない。それは、ダリオは実は、カーシュもリデルのことが好きだということを、十二分に知っていたということです。親友であるカーシュから、リデルを奪い取ってしまったということを、ダリオは常に自覚してたのでしょう。その罪悪感。
 或いは、この期に及んで「何も言わない」カーシュのことが、ダリオにとってはある意味……怖かったのかも知れない。鬱陶しさもあったでしょう。親友だって、お互い認め合っている筈なのに、この件については何も言い出さないカーシュ。リデルに対して、実は一度も挑戦してもいないカーシュ。はじめから、戦いの場から降りていた。
 そんなのは勝者の身勝手だと、欲しいものを得た者が、勝手なことを言うなといわれても、たぶんダリオにとってそれは、拭い去れない感情だったのでしょう。或いは、自分が勝者だと自覚しているくせに、敗者たるカーシュに対して、そんな暗い感情を持っている自分自身のことも、ダリオは憎んでいたのかも知れない……。
 「いっそのこと、正面きって争ってしまえばよかった」というのは、実はダリオの方の感情であるかもなあ。それはきっと、とんでもない波乱を呼び、ダリオもカーシュも、リデルだって傷ついただろうけど、たぶん結果ははっきり出せた。……けれどその争いを避け、表面のなだらかさを選んでしまったダリオとカーシュは、平穏すぎる日常の中で、お互いを傷つけあう。無意識に、無邪気に。

 グランドリオンを介して戦い合うことになったふたりですが、結果その方が、断然良かったんじゃないかとは思うんですよね。事件のせいで、すごく中途半端なかたちで終結せざるを得なかったふたりの、争いにすらなっていない、ひそかな対立。あれで膿は出せた。エンディング後の世界がどうなってるのか、今ひとつはっきりしていないのですが、たとえ再び「カーシュとダリオとリデル」が同じ世界に生きることになっても、今度はもっとゆったりした感情で、互いの幸せを保てると思うのです。

 ……ただ、ここまで書いてきて、つくづく思うんだけどさ、これってやっぱり、男の人が作ったエピソードという感じだねえ。カーシュとダリオは、確かにカッコいいです。剣を交えあって本音を語るところなんか、定番だけどとても好きです。でもね、リデルがさあ……彼女の立場って、結局「勝者のもの」以上でも以下でもないんだよね。この三角関係の中での、彼女の心理自体も、きちんと描けているとは、とてもいえないと思う。
 というか、「ダリオを思い続けています」というのは、とてもよく分かるんだけど、それにしてももうちょっと……カーシュに対する感情、とかね。カーシュの自分への思いに、気づいているにしてもそうでなくても、もう少し何かあると思うのよ。普通はさ。一連のイベント内でのリデルの感情というのは、本当に読めない。というか、彼女の感情そのものが、そもそもきちんと設定されてないんじゃないか?とも思う。完全に、中身の見えない、正体のつかめない「彼岸の女<ひと>」だよね……あれが「男の理想です」とか言われたら、「はあ、そうですか」と笑顔で応えつつ、私はテーブルの下で拳を握るね。
 美しさとはかなさ、だけではないリデルの要素を、何かもう少し見たかったようにも思うのです。……って、カーシュのトークのつもりが、つい方向がずれました。でもまあ、あんたの親友と想い人の話題だからさ、勘弁して下さいカーシュ様。


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