「アストロノーカ」〜野菜畑でつかまえて・前編〜

データ プレイステーション用ソフト 1998年8月26日発売
定価¥6.800(税抜) エニックス

今月水を飲んで暮らしてでも買え

 何だか発売から2ヶ月近くも遅れたアップになってしまい、タイヘン恥ずかしいのだが……どーしてアップが遅れたかというと、余暇にこのゲームばーっかりやっていたからなのである。どーにもならんな。でもそれぐらいおもしろいソフトなんです、これ。
 はっきり言って、私の98年イチオシソフト。今年はまあ、あと2ヶ月強残ってるけれど、あとのリリースラインナップを眺めてみる限り、これを越えるソフトは出ないと思われる(暴言。)
 ……いやでも、マジにおもしろいんです。とにかくエニックスが全っ然宣伝しやがらなかったせいで(笑……えないぞ、おい)、世間での認知度はかなり低いんですが。はっきり言って、プレステ専門誌を毎号買っているような、ハードゲーマー層にしか、発売を知られていない気がするんですけど。でも、隠れた名作というか何というか、絶対買って損はない(ハズ)ソフトなんです。
 以下にちょっと、「このソフトをオススメしてみたい人々」をリストアップしてみましょう。あなたがこの中に一つでも、当てはまるものがあるなら、このソフトは買いです。

1.最近のゲームは時間と手間ばかりかかって、いまいちやる気の出ないという人。
2.物理的に時間が足りないんだけど、一日1時間プレイでも楽しめるソフトを探している人。
3.長ーく遊べるソフトを探している人。
4.プレステ持ってるけど、リリースされているソフトが多すぎて、どれを買っていいのかわからない人。
5.無味乾燥な都会の生活に疲れた人。会社とかで「ノルマ」に追われて、いつもストレスを感じている人。
6.カワイイもの好きな人。
7.AIなどの最先端技術を盛り込んだソフトを体験したい人。
8.シュールな笑いを愛する人。
9.「極める」ことに燃える人。
10.食いしん坊な人。

 ……なになに?こんな条件設定だと、ちょっとでもゲームをやる人なら、必ずどれか一つは当てはまってしまいそうな気がするって?当然じゃないか。私はあらゆる人に、このソフトをとりあえず勧めておきたい気分でいっぱいなのだよ。とにかく、こんなおもしろいソフトが、ほとんど世間に知られていないことが悔しいのだよ。←誰だこの人格……。
 「怪人○面相」な口調はさておき、この雑文を読んでしまったあなた!あなたは明日、一番にソフトショップへ駆け込んで、「アストロノーカ」を購入せねばなりません。入荷してなかったら、泣きついて取り寄せましょう。何?今月は金欠で金がない?……借金しなさい(←おい。)もしくは、来月は水だけ飲んで暮らしたとしても、決して後悔はしないハズ!したときはどうするって?そんなのわしが知るかい。
 ……だんだん訳の分からないモードになってきたんで、とりあえずゲームの沿革を、先に説明しちゃいましょう。

魅惑の野菜畑にようこそ!

 「アストロノーカ」……即ち宇宙農家。その名の通り、このゲームはプレイヤーが「宇宙の農家」となり、野菜を育て、畑を荒らす害獣を退治しつつ、「最高の宇宙農家」を目指すゲームです。人工太陽ニッカボッカの周囲に位置する小惑星群に属する、ごく小さな惑星へと、プレイヤーが入植するところから、このゲームはスタートします。お供は「宇宙農協」派遣の農業用ロボット・農林PETE1号(通称ピートくん)。「ダンナさま」と、親しみを込めつつ忠実に仕えてくれる彼のアドバイスを受けつつ、プレイヤーは毎日野菜を植え、収穫し、種を交配して品種改良に努める一方、畑を荒らす害獣・バブーをトラップで撃退する日々を送るわけです。時には町で開催される野菜コンクールに、自分の育てた野菜を出品して、近隣の農家たちと腕を競い合います。目指すは全宇宙コンクール。最大難関のこのコンクールに勝てば、宇宙一の農家の称号を得ることができる……。
 何しろネタが農業ですから、こうして沿革を書いていても、ヒジョーに地味なんですけど……特筆すべきは、これらゲームを構成する、一見地味な要素ひとつひとつが、実はとても練り込まれており、異様に奥が深いということです。
 まずは野菜。最初にプレイヤーが入手できる野菜は2種類だけですが、これを何度も交配して行くことによって、新種の野菜を作り出すことができます。全部で30種類以上はあるこれらの野菜、一応「地球産の野菜」にルーツがあることはあるんですけど……これがもう、どれもこれもひと味違う奇妙なものばかり。
 例えば、ごく初期に入手できる「シマイモ」。ジャガイモのような外見をしつつ、何故かその表面には虎のような縦縞が……。「貧乏人の野菜」と呼ばれるこのイモは、安くてお腹のふくれる食物として、宇宙の人々から愛されているといいます。ピートくんの話によると、ヤキイモにしても独特の縞模様は残っているのだとか。品種改良によって、「重さ」を変えて行くことができます。
 或いは、これも比較的初期に入手できる「穴ホウレン草」。その名の通り、葉にぽこぽこと大きな穴ボコが開いているホウレン草です。実は、宇宙では単独で栽培しにくかったレタスと掛け合わされた野菜で、「ホウレン草の風味とレタスの歯ざわりをもつ宇宙野菜」なのだとか。品種改良によって、様々に「模様」を変えて行くことが可能です。
 ……個人的にはこの「宇宙野菜」というネーミングだけで、すっかり心を奪われてしまう私ですが。とにもかくにも、1種1種の野菜について、実は細かなプロフィールが作られており、それに何より、デザインじたいが奇妙ながらも大変に愛らしい。しかも品種改良のやりかたによっては、その外見もどんどん変わって行きます。この膨大な野菜の世界に遊ぶのが、このゲームのまず最初におもしろいところです。 

無限なる改良の嵐

 品種改良の話が出たので、その話題に移りましょう。ゲーム中では一貫して「交配」と称されるシステム、方法は簡単で、「交配マシン」という謎の機械(これがまた、内部がどーなってんのやら、奇妙であやしい感じの機械なんですわ。しかも、薄暗い納屋の中に置かれているから、交配シーンはアヤシサ120%……)に、かけあわせたい種を2つ、放り込むだけです。ピートくんが交配結果を予想してくれるので、これによって望みの交配結果が出るよう、選択を繰り返します。
 「交配」の目的は、大きく分けて2つあります。1つは、全く新種の野菜を作ること。もう1つは、今ある野菜の質を改良すること。前項で言った通り、野菜にはそれぞれ「改良しやすいポイント」が存在します。シマイモなら「重さ」を、穴ホウレン草なら「模様」を、それぞれ変容させることが可能なのです。この「重さ」「模様」などは、野菜の「属性」と呼ばれ、この属性の値を増減させて行くことにより、その野菜の質が決まります。
 属性にはそれぞれ、一定の数値ごとにレベルが設定されており、それに基づいて野菜の名前の頭に、属性名称がつけられます。たとえば、重さ属性レベル1のシマイモなら「やや重シマイモ」。模様属性−1の穴ホウレン草なら「変な模様穴ホウレン草」と言った具合に。プラス方向(品質のいい方)だけでなく、マイナス方向への属性レベル成長も可能です。
 何か文章化するとややこしいんですが、要するに「やや重」のシマイモと「重たい」シマイモを交配させたら、「ずっしりシマイモ」ができちゃった!……って、そんなノリでゲームは進みます。(もちろん極めたい人は、も少し丁寧に属性値の変化を増減できるよう、試行錯誤を繰り返すのですが……。)
 んでもって、ただでさえ野菜のネーミングが妙なのに、それに輪をかけてスゴイのが、この「属性名称」だったりします。……最初の内は、まだ穏便なんです。「やや軽」シマイモや「ゆかいな模様」穴ホウレン草ぐらいでは、「ああ、いい感じに成長してるかな」って雰囲気ですが、これがレベルの上の方の属性名称になると、なんかもう大変なことになってます。
 あまりバラすと、皆さんがプレイした時の驚きがなくなるんであれですが……「ゾウより重い」で「人面模様」で「舌でとろける」「毒薬原料」の「ホタル唐辛子」なーんて野菜が作れます。ほぼ、人間の想像の外側にある野菜ですね。だいたい変化できる属性も、「重さ」「大きさ」「模様」「栄養」などといった、割合常識的なものばかりではなく、「音色」なんてものまであります。野菜が、音を奏でます。いやマジに。
 属性名称がマイナス方向のレベルのものの方が、ネーミング的には笑えるものが多いです。しかし、いい野菜を作らないと、野菜コンクールではなかなか勝てない。ジレンマです。ところがここがよくしたもので、野菜を売る時の市場価格は(あ、育てた野菜は勿論、売って資金を稼ぎます)、「最高にいいもの」より「最悪に悪いもの」の方が高い!という状態にあります。おどろおどろしい野菜畑を作り上げて、資金をがっぽがっぽ稼ぐのも一興。それに世の中には、「最悪野菜コンクール」なんて、マニアックなコンクールもあることですし……。


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