ゲーム音楽つれづればなし(後編)

意外性の作曲家〜光田康典

 ……実は結構、「ゼノギアスプレイ後感」の方に、光田さんの音楽については触れてしまったので、今回はヘタすると、その繰り返しになってしまう気が……。まあ、要約しちゃえば単に「好きだーっ!!」ということなんですがね。音楽の趣味というのは、多分に感覚的なものであって、「生理的にダメ」だったり、「何となく好き」だったりすることこそが、実はその本質である訳です。だからぐたぐだと余計な説明をすればするほど、結局は蛇足になっちゃうんですよね。とほほ。(←って、いきなり投げるな。)

 とりあえず「ゼノ」の所で書いたことに、ちょっと訂正……というか補足。私はクロノで光田さんの音楽に惚れ、彼の音楽の最大の魅力として「オケ編成に、打ち込み独特の音を合わせるような、感覚の柔軟さ」を取り上げました。けど、これは半分当たってるけど、半分はハズレでしたねー。ゼノギアスのサントラを聞き込んだり、トバルNO.1やガンハザードまで合わせて聞くようになって、気づいたことがいくつかあって。
 確かに、クロノ・トリガーでの光田さんの曲には、すごくサンプリングした音源が多いんですよ。「ロボのテーマ」とか「ラストバトル」が典型的な例ですが……曲としては基本的にオーケストラ編成なんだけど、そこでサンプリングの「鳴き声」とか、SEに近い「音」をパーカッション的に使っていたりするパターンですね。
 ただその後の光田さんの曲を聴くと、そこまで「音質混合的」な訳ではなかった。ゼノの音楽なんかはオケ+民族音楽系で、ほとんど全編が統一されてますし、逆にガンハザードは無機質系。その世界観の中で、割合楽曲もきっちり統一されてるので、ある意味クロノの方が、やや状況が特殊だったのかな、と……。
 クロノは「時代」ごとに、統一された音楽コンセプトがあるようですが、それは逆に言えば、すごく雰囲気の違う曲群を幾つも作らなければいけないってことですよね。んで、結果として「リズム系の原始」「王道ファンタジー的中世」「サンプリング無機質系未来」といった具合になった訳ですが、この中で私の印象にすごくこびりついたのが、サンプリング系だったんですね。初めて聞いた時はやはり、すごく新鮮だったんですよ。
 ただ今聴き直して見ると、その後の展開から見ても、最も「光田さんらしい」曲がひしめきあっていたのは、やはり「古代」からラストバトルにかけての音楽でしょう。それも系統が2つあって、ひとつは民族音楽風のきれいなメロディラインの曲。もうひとつはアップテンポでパーカッションが印象的な曲。
 前者の方は、民族音楽「風」というのがミソ。光田さん本人が、ゼノのサントラで仰ってた通り、ケルトや中東の民族音楽の要素を取り入れつつも、それは決して元の民族音楽、それそのものではない。一度光田さんの内部を濾過されて生まれたもので、私にとっては多分、この「濾過の具合」が、非常に肌に合うんだと思います。ある意味、とても無国籍な音楽のようにも思えるんですが……こういう「各国いいトコ採りの結果生まれた、どこの曲とも断定しがたいが、美しい曲」というのは、日本人の作曲家ならではのもののような気もします。(日本にも、伝統音楽と伝統音階があることはあるんですけど、ほとんどの作曲家は、曲を書く時には西洋音階の考え方でやっている筈……音楽教育自体がそうなってますし、だいたい現代日本人が生まれて最初に聞く曲(ルーツになる音楽)って、9割9分西洋から来た音楽だよね。ロックとかポップスとかは、言うまでもなく元は全部、あちらの音楽だから……よほど特殊な環境でもない限り、「雅楽が原点」「三味線を聞いて育った」って人はいないよねえ。かといえ我々はやっぱり「日本人」で、どこかにその民族固有のリズムも残ってはいる筈だし… …だから日本人の音楽趣味と言うものは、極めて無国籍音楽なものなんじゃないかと、私は思っていたりするんですが。そういや食の世界でも、日本人は無茶苦茶無国籍ですよねー。和洋中に、最近はイタリアや東南アジアの食べ物も、家庭に入りつつあるし、ホントに世界に類を見ない柔軟な民族だねえ。……閑話休題。)
 後者の「アップテンポ」の方は、重要なダンジョンやラスボス関係で多く使われる曲ですが、光田さんのアップテンポって、むちゃくちゃカッコいい曲、多くありません?それも結構、メインのメロディラインがものすごくメロディアスだったり、和音重視系だったりするのに、ベースやパーカッションがどかどか刻んで、鳴り響いているようなパターンが多い。そういう意味で、私が光田さんに最初に感じた「意外性の音楽」という印象も、間違いはなかったような気がします。取り合わせの妙というか……。

アレンジの生理〜光田のツボ

 楽曲にとってアレンジというのは本当に大事で、せっかく素敵なメロディがあっても、その編曲がありきたりだったりすると、曲そのものもどうも、ありきたりに聞こえてしまうものですよね。あと、「自分のセオリー」みたいなのを持ちすぎてて、同じようなパターンの楽曲ばかり作るのも、あんまり……。いくらいいアレンジでも、おんなじパターンの繰り返しでは、絶対に飽きてくる訳ですから。
 光田さんはその辺り、常に意表を衝いて来るというか……別に奇をてらっている訳ではないし、結構王道的アレンジかなー、と思わされる曲も多いんですが、時々どかーんとこう、突き刺さるようなものがあるんですよね。
 個人的に、「バラードは静かに、アップテンポは派手に」という私の趣味と、何か非常に一致するものが多いんですよ。そこが惚れた第一の原因なのかも……楽器の使い方が、私にとっては聞いてて非常に心地のいいものが多いんです。特に(何度も書いてますが)パーカッションと、あとはコーラス。コーラスはハードがプレステに移行されてから、ごく普通に使われるようになりましたけど、実はクロノの頃から、光田さんの楽曲にはコーラス風の音をとりいれたものが多いですね。
 実は光田氏と私めは、世代が一緒……年令がほとんど変わらないので、アレンジが合う感じがするのは、その辺にも関係があるのかも知れません。

 あともう一点。光田さんの曲は、ぜひ「アレンジバージョン」のアルバムでも楽しむべし!ゲーム音楽のCDって、だんだん世間の認知度も上がってきましたが、売れるのはやっぱり「オリジナルサウンド」の方で、アレンジアルバムは売れない傾向にあるみたい。まあ、ほとんどのアレンジアルバムは、元の編曲の生理そのまーんまに、ただ生オーケストラに直してオシマイ、というシロモノだったりするんで、わざわざアレンジ買うまでもないと思われがちなのかも。
 しかし、光田さんがらみのアルバムは違います! あの方のアレンジアルバムは、まさにその楽曲の「再生」と言った感じ……全く別のものになって蘇っているんです。それでいて、元のメロディの秀逸さを見せつけ、楽曲の世界観を充実させているという辺りは、さすがの一言。これは勿論、一貫して光田さんの楽曲アレンジに関わっている「GUIDE」の方々のお力もあるのでしょうが。

その他、印象的なゲーム音楽

 光田さんの楽曲の、具体的なベスト5に行く前に、それ以外のゲームで印象的だったものを、ちょっとピックアップしてみました。

『MOTHER2』
これは何と言っても、「ぼくの場所」の音楽……主題曲のあの曲に尽きますねー。聞いてるとホントに、涙出そうになる……。メロディそのもののきれいさ・せつなさも勿論ですが、各地の「ぼくの場所」を廻って、音を集めていくと、途切れていたメロディが完成していくのに加えて、アレンジも変わっていくんですよね。すごい斬新だと思う。
作中では、やはりラスボス……ギーグ戦の「祈り」の局面での、使われ方が素晴らしい。旅の途中で出会った人々が、主人公たちの為に祈ってくれる。アップル・キッド、アンドーナツ博士、トンズラ兄弟、どせいさん……その間流れていた、危機感に満ちた神秘的なメロディが、ふっと突然「ぼくの場所」のオルゴールアレンジver.に切り替わる。そうして、真夜中の主人公の自宅で、無事を祈ってくれるのはママとトレーシー……主人公の家族。
あれは本当に泣けました。今思い返してもこう、胸が痛くなるようなシーンですね。その後の、ギーグ戦最終段階での展開も掟破りですごい!……もっとも私は最初、あの仕掛けに気づかす、普通に戦い続けて全滅……を繰り返してしまいました。まさに愚行!
『MOTHER2』はホントにいいゲームでしたね。ウチの母は普段ゲームをあまりしない人ですが、その彼女が唯一ハマったRPGがコレ。私が最近『FF5』の為にSFCを引っぱり出して来たら、いきなりリプレイ始めてしまった……5回目のプレイを。


それでは、光田さんの代表2作品の楽曲の、個人的ベスト5を。

クロノ・トリガーベスト5
ゼノギアスベスト5

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