『キングダムハーツ』(プレイステーション2)

 「ディズニーとスクウェア、夢の共演!」……おい、それホントに大丈夫か?と、第一報を聞いて思ってしまったことを、ここに深く懺悔いたします。
 いやでも、「スクウェア&ディズニー」という組み合わせそのものが、かなり唐突な(そしてどっか不安を誘う……)印象だったんですよ。それにキャラもののゲームって、何処のも大概がアレでアレな感じになりがちだし。「ビミョー……」と思いつつ雑誌発表を眺めてみれば、ディズニー頭身の野村キャラは、何だか濃度が二割増だし……。←おいこら。
 どーなっちゃうのかいな……と、極めて不審に思っておったのですが、遊んでみたらこれがびっくり!非常に楽しいアクションRPGでしたのこと。
 サクサク進むストーリーといい、単純明快な操作といい、「ただクリアするだけならさほどではないけど、寄り道するなら少し頭をひねらせる」絶妙なバランスといい、どこをとっても楽しめる一本でありました。PS2持ちで、ディズニーキャラに遺恨のない方ならば、遊んでみて損のないソフトです。今期イチオシ、マジでオススメ。アクション苦手な方でも、この私(『ICO』レビュー参照)がクリアできたんだから、絶対大丈夫っすよ!(サブクエストの幾つかは、諦めることになるかもだが……つーかファントムが倒せないよう。魔法が当たらない〜)

 私はディズニーに対して、格別に思い入れが強いという訳でもないので(一般的な日本人の平均的なテンションだろーと思う)、判断つきかねる面もあるんですが……ある程度以上、ディズニー作品が好きな人にとっては、これはたまんないソフトじゃないでしょうか。だってほんとに、ディズニー映画の世界観の中に入って、登場キャラたちと遊べるんだもん。その「ホンモノ感」というのかな、ひとつひとつの作品「らしさ」の表現が、ものすごくよくできている。
 全体の印象としては、まさに「ディズニーランド」なんですよ。TDLに遊びに行って、各映画のアトラクションを次々乗り回っているみたいな感じ。「浮島世界」というか、多層次元世界という設定で、ディズニーワールドの集大成という雰囲気を、うまく引き出してると思います。
 スクウェアならではの映像表現、3Dの技術を、FFシリーズのように「これでもか」と見せ付けるような使い方とは少し違う。すごくフツーに見せているようで、ものすごい勢いで「映画の空気感」を再現している。キャラクターたちの表情の豊かなこと!ホントに映画から抜け出して来たようなキャラクターたち。ドナルドもグーフィも、ジャックやアリエルだって、別に映画の中であんな風にアクションバトルしてる訳じゃあないのに、ひとつひとつの動作に「らしさ」を感じられるのは何故だろう……。

 今回取り上げられたディズニー作品の中で、私の最愛の一本が『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』です。これが入ってるから、購入を決意したよーなものなんですが……いやもう、本当に素晴らしい!スタッフの愛を感じます。あの「丘」に立った時には、マジでちょっと鳥肌が立ちました。
 ゲストメンバーは全体にスタータス的に優れてますけど、中でもジャックの技の多彩さ、幾つもの攻撃魔法を使い分ける「王者」らしい強さが、すごく嬉しくたのもしい。バトルプランナーさんありがとう!あのふよふよした独特の動きも!アクションバトル中だと、視点変更が目まぐるしくて(だから臨場感あって楽しいんだけど)、ジャックの勇姿をじっくり眺められないのがちょっと悲しかったり。仕方ないので自分(ソラ)だけさぼって、ぼーっとジャック見てたり。そんでハートレスに倒される、と。←……。
 他の作品は、どっちかっていうと最近のタイトルが多かったかな。私のリアル子供時代は『眠れる森の美女』『101匹わんちゃん』『白雪姫』あたり(が、日本上陸した頃)なので、サブクエストor本筋の外になっちゃってるのが、少し寂しくもありました。まあ「姫と王子」モノは、幾つもあっても差別化できないからあれですけどね。(あ、でも「ポリゴン七人のこびと」は見たかったかもー。)

 本筋のシナリオを、思いっきりオリジナルで書いてしまったのが、成功の一因かなと思います。それで立筋をきれいに通しておいてから、各映画由来のエピソードや情景を肉付けとして、周辺に配置してある。結果、全体がごちゃごちゃしないですっきり楽しめた。ディズニーっぷりを満喫しながら、一本の物語として楽しめるものになってる、バランスが本当に絶妙なんですよ。
 立筋がしっかりしてるから、各クエストの元ネタになっているディズニー映画を観ていなくても、お話としてはちゃんと理解できるんですよね。その辺も巧い。普通、ここまで元の映画世界を取り入れちゃうと、「観てない人はお呼びでない」って雰囲気になりがちだと思うんですよ。でもこのソフトには、そういう排他的な空気がない。
 そこら辺もディズニーランド的なんですよね。TDLで、観てない映画のアトラクションでも、結構楽しめてしまうように……飛んだり跳ねたりのアクションの小気味よさと、本筋シナリオの語り方、そして何より、ソラを巡る物語のテンポ感に、うまいこと引っ張られてエンディングまで一気に突っ走ることができました。

 ソラがねえ、さっぱりして元気で可愛くて、扱っていてとても楽しいキャラでした。FF10といいこれといい、最近の野村ヒーロー、気取らないオトコ前っぷりが、すごくいい感じですよね(FF7〜8の頃から、気分の変化があったのだろーか……)。初見で「濃!」と思ってしまったことなど、開始3分で忘れました。オープニングの「水中落下」ムービーと、その後の「ステンドグラスの間」がすっっごく綺麗でねえ。
 ディズニー的なギャグを各所に挟みつつ、スクウェアらしいインナースペースな展開もありつつ。全体的には、素直なソラのパーソナリティにふさわしい、真っ直ぐな印象のストーリーでした。メインキャラクターを絞って、ソラ・リク・カイリのトライアングルをじっくり描く構成も、「主軸に絡む多彩なディズニーキャラ」という展開とぴったりハマッていて。
 リクも好きです。「ライバル」って永遠のテーマだよなあ……ソラへの対抗心から闇へ堕ちてく姿が痛々しくもあり、しかしハートレス姿は「地味派手」っていうか、コスプレ?って感じになっちゃうのが、何かこう、微妙に嗜虐心をそそるキャラです(っておい)。
 ソラvsリクの構図が立っていた分、ややカイリの印象が薄い……というか、心理変化の描写があっさりしてたのは、ちょっと残念だったかも。島の崩壊後、カイリがいた「場所」のせいもあるんで、なかなか難しかったかなとは思うんですが(ただあれ、事情は判ったけど、理屈が判らんというか……「どうやってそんなことが!?」と思ってしまったのは私だけ?やや、反則……)。

 ハートレスとキーブレード。ある意味ベタなネタを、真正面から描いた辺りは「らしいなあ」という感じ。ラスボスがいつもの「ちょっとイッちゃった一個人」なのも、まあお約束かな、そろそろアレかな……と思いつつも、派手でおもしろくて大塚声がカッコよかったのですべて良しです。しかしあのラスボスは、なんかすごかったですけどね。「何段変形するんじゃ!!」と画面にツッこんだ。
 そしてエンディング。「あの人」(……人?)の出し方といい、リクとの決着のつき方もね、不満なく納得できたラストでした。歌と画面のマッチングもすごい。宇多田ヒカル、使った甲斐があったよなあ……。
 再生する世界の美しさ、はじける風景、遠ざかる姿。普段のリアルタイムポリゴンの、生き生きとした動きに充分満足していたのに、エンディングムービーでのソラの笑顔のせつない美しさ、カイリの涙……久々に、見ててこちらもうるりと来ました。

 壁の落書き。描き添えられる思い。再び出会うための約束。どんな時だって、側にいるから……。

 はじけるような爽快感と、すこしせつない余韻、そして怒涛のような「Another」。いやもう、これはぜひとも見てみたいです。基本の世界観がしっかりできてるので、すごくおもしろいものできそうですよねえ。
 最後に、音楽について。フィールドの音楽から全く切れ目なく、バトルの音楽に移行して、再びフィールド曲に戻って行く……ものすごいことやってます。ディズニーっぽいようで、やっぱりものすごく下村節。かちゃぽこした可愛い音色の曲が多くて、楽しいです。トラヴァースタウンでのバトル曲が一番好きかな〜。



 ……さて。ゲーム本体についてきちんと語りましたので。お役目は果たした。
 ここから壊れます。

 エーアーリースーー!!!!!!

 4年越しの思いが、こんなかたちであっても、決着がつけられたことが何よりしあわせ。パラレルならではの展開であり、おまけ要素の客寄せパンダに過ぎないイベントなのかもしれないけど……わたしが、あの時、見たかった結末。「さがす」ものを「迎える」展開、投げたボールがきちんと、相手の手に届いた瞬間。
 「わたし、あなたを、さがしてる」――途切れたままのあの言葉が、時空を超えてあのひとに伝わったのだろうか。「さがしてるやつがいるんだ」……。

 本当にねえ、「キングダムハーツ」にFFキャラ出ますよ、エアリスいますよ、と言われても、それは本当におまけなんだと思ってた……というか、それはわきまえてたつもりなの。だって、本筋じゃないんだから。いくらファンの支持があるキャラクターたちだからと言って、必要以上無駄に出張って、ソラたちのドラマの邪魔になるようなんだったら、「キングダムハーツ」というソフトそのものに対して失礼だろうしね……。
 ただちらっとイベントに顔出ししてるの眺めて、にんまりしてればオッケー、程度の要素なんだろうし、それで充分満足するつもりだったんですよね。トラヴァースタウンのイベントに、思いのほかみんな絡んでて、何かおもしろい情景だよなあ……とウケたりしつつ、「それ以上」のことは、何も期待してなかった。期待するもんじゃない、とも思っていたし。
 それがあの……エンディング。フツーに本編のラストを楽しんでいたところに、降って沸いたようなあのシーン。思わず声を上げてしまいました。全く予想もしてなかったから。

 こんな風に書くと、「そんなにクラウド×エアリスなラストなの!?」と期待される方が出そうですが、いや、シーンとしてはほんとにちょっとなの。「おまけ要素」の範疇は越えてない(……と、思う)。ただそのワンシーンが、ほんとにね……私にとって、ずうっと待ち焦がれてたものを今、見せてもらった、そんな感じだったのです。
 本編じゃないんですけどね。ええ、百も承知の上です。外部のおまけ要素で、ちらっとサービスされただけで、何浮かれてんだか、という感じでしょうねえ。よそから見ればさ。むなしいあがき、あるいはただの踊らされたファンでしかないんだろうけど。
 でも出会えたんだもの。そして、ハッピーエンドなんだもの。
 かくしてホロウバスティオンは、私にとって最大の夢見どころとなったのでした……。

 しかし『キングダムハーツ・アルティマニア』を見ると、野村氏はやはり大元の作り手らしい冷静さで、再登場のFFキャラたちのイベントを取り扱っている感じですが……現場のスタッフの中に、かなりエアリスに対して思い入れのある人がいたっぽいですね(P.525のエアリスのコメント……「FF7を担当していたスタッフからの要望」)。よ、よくぞ要望して下さいました!ありがとう!!つーか、同志だろ君!!(←なれなれしすぎです)


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