『つぐない』 (プレイステーション2)

 結構前にソフトだけ買ってあったのですが、いろいろあってプレイしたのは、半年ぐらい遅れてからのことでした。PS2用のRPG、光田康典氏が音楽全面担当ということで、光田ファンの周辺では、知名度が高いゲームです(ごめん……)。
 非常にオーソドックスな中世ファンタジーの世界観に、全体に地味〜なグラフィック(褐色と灰色……ある意味超リアルな中世西洋な色彩)、淡々としたイベント進行。こう、とりたてて「ここがスゴい!」とか「斬新!」というものはないんですけど、丁寧に作られた雰囲気は好感もてます。予想してたよりは、ずっとおもしろかった。
 主人公はいわゆる旅の何でも屋。ある城の領主から依頼を受けて、孤島に封印された「宝珠」を盗み出したところ、それが光の神の怒りに触れ、「天罰じゃ〜!」と肉体と魂を分離されてしまう結果に。魂だけの存在になった主人公は、神に命じられた善行……心のすさんだ人にとり憑き、本人の代わりにトラブルを解決してやることを繰り返して、神罰が解けるのを待つしかない。「宝珠盗めって依頼したのは領主だろーが!」という怒りもむなしく、元の肉体に戻るため、今日も主人公は心のすさんだ人々を助けて回るのでした……と、そんな話。
 もちろん問題の「宝珠」は、光の神が闇の魔王を封じる為のアイテムで、それを「盗め」なんて命じた領主は、ばっちり魔王に魂を売っており、善行を積んでようやく肉体を取り戻した主人公は「お役ご免」と逃げる訳にもいかず、領主と魔王の始末をつけるハメに陥るのでした……ってエンディングまでネタバレしましたけど、ちょっとファンタジーRPG慣れしてる人なら、最初の5分でオチまで読めるような物語だから仕方がないっす。つーか光の神……アンタ最初っから、オレ(=視点主人公と同化)に魔王始末させるつもりで、天罰とか言って肉体奪ったんだろ!
 あらすじだけ書くと、えらい単純なファンタジーRPGなんですが、このゲームがおもしろいのはここからなんです。肉体を取り戻す為に、善行を積む……他人への乗り移りを繰り返しては、すれ違った人間関係を修復したり、同業者の仕事依頼を処理したり、町を襲う盗賊団をやっつけたりする過程で、乗り移り相手の人生を垣間見てしまう。隣の晩御飯から妙齢の娘の悩みまで把握できてしまう(主人公、成年男子なのに……)、この何ともビミョーな感じがね。勧善懲悪な世界観に似合わず、メインとなってるゲーム部分は、ある意味ちょっぴり下世話チックなのがおもしろい。人間なら誰しも持ってるだろう好奇心を、くすぐるつくりになってるんですよね。
 「乗り移り」というシステムが、画面内のキャラクターを「操作」するという、ゲームならではの大前提とうまくかみ合っているのもポイント高い。幽霊みたいな存在になってしまった主人公は、オープニングからエンディングまで、終始ひとりぼっち(いろいろアドバイスしてくれる妖精はいるが)。パーティバトルがない代わりに、乗り移った相手によって、さまざまな戦闘スタイルを使うことができます(魔法が得意な神官とか、斧が得意な戦士とか)。ここら辺も、ちょっと新鮮だった。個人的には弓戦士が楽しかったな〜。あまり強くはなかったんだけど。

 しかし私が一番気に入ったのは、神罰だの魔王封印だのと大袈裟な前フリがされてるにもかかわらず、「肉体から離れすぎると、魂が消えちゃう」(と書いて「いろんな容量が追いつかなかった」と読む)という理由で、主人公は肉体を保管しててくれる僧院(修道院)のある村から、一歩も外に出られないところです。
 いや、クエストによっては村の外へも出かけるんだけどね、基本的には行動範囲は村の中だけ。悪の領主の城と僧院の他には、数軒の店と漁港しかないちっちゃな漁村(寒村という方がいいかも……)が、神への罪を償う「つぐない」の舞台。全世界の命運、光と闇の戦いの行方を託された主人公の、やってることは要するに、「ご町内トラブル何でも解決係」。迷子の猫を探したり、家出娘を探したり……主人公、自分が腕利きのレイヴァン(何でも屋)だった過去を、思い返してはいけません。涙が出ます。
 何かねー、古典的で壮大な設定と、覗きシステム(違)とさびれた辺境の漁村と、全然ちぐはぐな要素どうしが「つぐない」という神の命令の前に、強引にまとめ切られてる雰囲気が、個人的にかなりツボです。普通とは逆の意味で。
 キャラクターたちは徹頭徹尾、しち真面目。いい人、というか単に朴訥というか。エピソードはハートウォーミング系が多くてなごむし、光田氏の音楽はケルティックのムードたっぷりで、素晴らしく美しい。スタッフがね、ものすごく「真面目」に作ってる気がするのね。んで、あまりにも真面目にやりすぎて、どっかヘンになってるような気もするのね。結果としてカッコいいんだか情けないんだか、よくわかんない世界になってしまった観があります。個人的には好きなんですが。
 特に目だって新鮮なシナリオや演出が楽しめる……というのではないけど、つれづれに遊んでみるには、悪くない1本だったと思います。終盤、闇に包まれた世界での「蝋燭やランプの灯火」表現が、とても良い雰囲気。

 ただねえ、ちょっと全体に読み込みが遅め。というか、ロードのたびに「Now Loading……」と表示されるのが、「まだかまだか」という感じでうっとうしいのよ。純粋な読み込み速度では『ゼノサーガ』辺りとどっこいどっこいというかメニュー画面の開閉は早いことを考慮するとゼノサガよりはマシぐらいなんだけど。文字が出ることで、却ってもっさり感を強調しちゃってるのね。こういうところにも、ヘンに真面目すぎて損してる部分が垣間見えますねー。



『マジカルバケーション』 (ゲームボーイアドバンス)

 01年最後にゲットしたソフト。年末ぎりぎりに購入したので、実際にプレイしたのは、02年のお正月以降の方が長いんですが……一応、今年分に入れました。携帯機のRPGです。パッケージを見れば一目瞭然ですが、かつてスクウェアで『聖剣伝説レジェンド・オブ・マナ』を手がけたグラフィッカー亀岡氏&ディレクター井上氏の最新作。
 バトルもシナリオも、すごく丁寧に、緻密に作りこまれた佳作。単純に「おもしろいRPGないかなあ」と探してる人たちはもちろん、聖剣LOMのファンなら絶対に買い!という1本です。「ファンタジーなるもの」の捉え方が、非常にユニークでおもしろい。特に、いわゆる「亜人」系のキャラ立てとかが抜群だよねえ。創作世界にしかいないようなキャラクターたちでありながら、端々まで丁寧に描かれた世界の中では、不思議と自然なリアリティをもって「生きている」手触りがするあたり。

 しかしその、一見ユーモラスな世界の中で、動いて行く物語は重く悲しい……ここのチームならではのテイストは今回も健在。というか、しょっぱなパペット族のエピソードで、何ともやりきれない思いでいっぱいになってしまいました。
 愛の大使、メースとシナモン、キャンディとオリーブ、そしてガナッシュ……。ちからを欲するもの。繰り返される生命、成し遂げるべき人生の意味は何?魔法を学ぶものが、かならず直面することになる闇、エニグマ。すべてを失った「果て」に、初めて見えるようになる風景。「魔法を失った」筈なのに、「世界を思いとおりにできる」キャンディのちからとは?ふと思い出される「懐かしい歌」のあのことば。「世界はイメージでできているんだよ……」。

 基本的なテイストが「学園モノ」だというのも、おもしろかった部分です。ひとつのクラスにはいろんな性格や考えの奴がいて、でもみんな同じ場で同じものを学ぶ、仲間どうしで……次々襲い来る現実を前にした時の、多彩なキャラクターたちそれぞれの、反応が全然違っている。そこらがまた、とうに「学校」を卒業してしまった身としては、えらく郷愁をかきたてられる部分でした。現役学生の人には、また違った感慨があるかも知れませんが。
 そして担任のマドレーヌ先生。キャラがいいんだ。ラストの告白は、予想はしてたけど笑った。あっけにとられたガナッシュの反応が、「大人ぶっても、やっぱり子供」という感じで、とってもかわいかったです。

 かなり重いテーマを内包した物語ではありますが、基本的にはテンポ良く、シュールなギャグも満載で、さらりとエンディングまで進めることができました。ラストの、みんなが未来へと向かって行く結末に、ようやくほっとさせられたり。やっぱりね、子供たちが主人公のお話は、誰も死んだりせずに、前向きに終わるべきだと思うので。
 後味はすっきりと、でもどこかほろ苦い……ウィルオウィスプの「ゼン部屋」での、グラン・ドラジェとガナッシュの会話は、解釈の難しいシーンですね。ほんとうの「自由」とは、いったいどんな意味を伴うものなのだろう……。

 単純にして奥が深い。シナリオもそうだし、バトルもコツを掴むまで、結構苦労してました。というか、一応のコツを掴んだのは、2周目を始めてからでした。精霊コンボが強いのは当然ですが、全体にすごく速攻重視のシステムですね。ラスボスに2ターンで瞬殺された時には、クリアできないんじゃないかと思いましたよ……。
 しかし「Aボタンで魔法発動グラフィックカット可」という機能は素晴らしい!結構レベル上げが必要なバランスなんですが、この機能のおかげで抜群の能率でバトルできます。他社のソフトも、こういういい部分はどんどん「相互影響」して行って欲しいものです。

 聖剣LOMではサボテン君に魂を抜かれ切ったこといですが、今回マジバケでは「こんにゃく様」にマジ惚れ。特にフィールド上で横向いてる時のぺらぺら感がたまらないでぺたん。失望してぶっ倒れてた時の姿も最高ぺたん。一番お気に入りの台詞は「口の中がぬらぬらするでぺたーん!!」でぺたこーん!
 あとさりげなくポット族もお気に。身近に一個欲しい感じ。カエルグミを入れなかった場合の「ドキドキしちゃった」が可愛い〜。
 パーティキャラではピスタチオ、カフェオレの「お笑い担当」組がタイヘンに可愛かったです。特に、闇のプレーンへ向かう時の「帽子ノステキナコトイサンニ、2000テン……」には爆笑しました。20歳以下にはわかんないだろこんなネタ!
 あとは意外と毒舌系のシードルや、おっとり娘のアランシアも好きでした。アランシアはバトルでも使えすぎ。というか、音属性が強いんだよね……レベル18超えたら無敵。終盤は石属性が多いこともあって、ずーっとスタメン。主人公を除けば、メンバー1のレベルを誇っておりました。

 キャラクターの名前やダンジョンの名前など、固有名詞が全部食べ物・飲み物の名前ってのも、可愛いというか脱力というか。「レーミッツ(つみれ)」やら「グガンデ(田楽)」やら、新しい場所に行くたび笑ってしまいました。使われてる食べ物・飲み物に、あんまり法則性がないのも、逆に気になるんだよね……(気になると言えば、砂肝……じゃないモギナス魔窟にいる「キヤキスのツボ」の名前が、個人的に納得いかん。すき焼きに大根とか入れるだろうか……)
 そしてひとつだけ、「モルビエ火山」の元ネタ食べ物が見当つきません。さかさ読みでもアナグラムでもなさそうだし……ずうっと悩んでいるんですけど、お酒の名前か何かかなあ。

追記:その後、掲示板での書き込みで、「モルビエ」はチーズの名前と判明しました。灰で燻した、表面煤だらけの黒っぽいチーズです。なるほど火山には似合うかもー。


つれづれゲームレビュー / ラジカル・ドリーマーズの小部屋