『真・女神転生III〜NOCTURNE〜』(プレイステーション2)

 メガテンファンが待ちに待った、真・女神転生シリーズの最新作。つい数年前からメガテンにハマった、新参者のファンではありますが、私にとっても待ち遠しかった1本です。いやもう、めっちゃめちゃ面白い「ゲーム」を堪能させて頂きました。PS2持ちのRPG好きなら、一度遊んでおいて損はないと思います。
 今回最大のウリはたぶん、3Dポリゴンで描かれた悪魔たち……あのメガテンの悪魔が、3Dでバトルする!という点でしょう。実際、ゲーム誌でもずいぶん前から、ポリゴンな悪魔たちの画像が公開されてたし。でも正直、静止画像で眺めている時には、「ふーん、立体的だねえ」という印象程度しか、抱けなかったんですよね。2D時代から続くシリーズ物が、新しいハードで3D化するという現象自体、別段珍しくもなくなってるし(ドラクエしかり、幻水しかり……)、時代に合わせたんだなあ、と納得して終わってました。
 ……が。メガテン3D化の真価は、ゲーム内で動いてこそにあったのです。当たり前っちゃ当たり前なんだけど、このゲームは殊に「キャプチャー静止画」と「ゲーム内で動く映像」の差が激しいように思う。
 元々がどこか無機質な雰囲気を持ったデザインの悪魔が多いせいかも知れないですが。止まった写真では、ただのポリゴン集積体でしかなかった悪魔たちが、ゲーム内に置かれた途端に、生き生きと動き始める。シンプルかつシックな雰囲気の世界に、暴れ戦う悪魔たちのダイナミックな動き。ド派手ではないのに、すきっとテンポ感のある迫力のバトル、無表情でいて、どこか色気すら感じられる悪魔たちのアクションまたアクション。
 発売直前、アトラス公式サイトにアップされたプロモーション映像を見て、マジで鳥肌が立ちました。ケルベロス、クー・フーリン、ジャックフロスト、ピクシー……メガテンおなじみの悪魔たちが、崩壊した東京の中を生き生きと跳ね回る。そして、不思議なタトゥのような文様を肌に浮き上がらせ、ひときわあざやかに戦い続ける本編主人公……。
 悪魔たちの饗宴。主人公すら悪魔と化し、悪魔を従えその力を行使する。デモ映像を見て受けた印象は、裏切られることはありませんでした。悪魔とともに、悪魔と戦う。シンプルかつ根本的なメガテンの面白さが、ぎゅっと濃密したような、それが「ノクターン」の世界です。

 メガテンの何が楽しいって、悪魔を仲魔にして戦ったり合体したり……スキル継承に悩みつつ、ねちねちと邪教の館にこもったり、新しい敵悪魔とエンカウントしてぶちのめしつつ、「今度この悪魔作ろ」とか思ったりする本末転倒っぷりにあったりすると思うんですが。今回の「悪魔遊び」はホントに面白かったです。動き、バトルする仲魔の姿を見られることが、めちゃめちゃ新鮮で!
 新搭載の「仲魔成長システム」も、シリーズ伝統から言えば邪道なんでしょうが、絶妙の経験値バランスもあって、個人的にはたいへんいいシステムだと思いました。お気に入りの仲魔をしつこく育て上げてもいいし、従来どおり合体を繰り返して新しい仲魔に作り変えてもいい。「どちらでも、プレイヤーのお好みのままに」というシステムを提供しているように見せかけて、一方にはリスクがあったり手間が膨大だったりで、結局そんなに選択肢がなくなっちゃってるゲームも多い中、このゲームはすごくよくバランスをとってると思います。本当の意味で、プレイヤーの「お好みのまま」を実現できてる。
 バランス。何かと敷居の高げなメガテンシリーズの中では、今回はバランス取りがすごくよくできてると思いました。セーブポイントの配置っぷり、月齢(じゃないカグツチ齢)の進行速度、主人公の成長速度と仲魔の成長速度、各スキルの消費MP・HP量、敵の出現バランス……どこをとっても、決してヌルくならず、かといえ不条理なほど厳しくもない。シリーズ伝統の「さっくり死ぬ」感覚はしっかり残しつつ、知恵と力でそれを軽減できる状況を、バランスよく配置している。
 だから今回は本当に、メガテン未プレイ者にこそ、遊んで頂きたい一本だと思います。「3」と言っても、話は全然前と関連がないし。RPG好きで、これだけの良システムに触れたことがないと言うのは、もったいないと思うのです。具体的には、このバトル!

 それなりにいろいろとRPGを遊んで来ましたが、この「ノクターン」のバトルシステムは本当に独自の新機軸という印象を受けました。一応はターン制コマンド入力バトルなんですが、ターゲットの弱点をつくことで、行動の手数が増えるシステム。敵の弱点をつけば、こちらの行動手数が増える反面、敵に弱点をつかれてしまうと、一方的にダメージを受け続ける結果になる。敵のミスを誘って行動の手数を奪うこともできるけど、逆にこっちがミスをすると、手痛い反撃ターンが帰ってくる……。
 仲魔の存在を生かす為のシステム、なんですよね。今回はひたすら「悪魔の為のゲーム」だと、私が思った所以もそこにある。主人公ひとりでやれることは、結構限られていて、戦いの鍵を握るのは仲魔たち。いつ、どこで、どんな技と属性を持った仲魔をパーティに投入するか。それが生き残る為の、唯一最大のテクニック。
 過去のシリーズ作では、極端な話、仲魔を呼ぶのはボス戦だけ。主人公とパートナーが銃でも連射してれば、切り抜けられることも少なくなかったんですけど……今回はとにかく、仲魔がバトルのカギ。だから、合体やスキル選択にも余計に力が入る。力を入れただけの結果が、ちゃんとバトルに反映できるんだもの。これは本当に楽しかったです。
 しかも、バトル自体のテンポ感がめちゃめちゃいい。技を次々かけて行く感覚、オートバトルのびっくりする程の速さ。全体に読み込みストレス皆無なこともあって、サクサク進むこの快感は、一度味わうとやみつきになります。
 あんまりさくさく進むおかげで、全滅する時も一瞬だったりするけど。でもだんだん、それすら楽しくなってくる。各ダンジョン毎に、「殺されやすい強敵」がいたりするので、そいつと遭遇するたびにドキドキ。残りHP1で即死を堪えるスキル「食いしばり」で耐えて勝ったり、瀕死になって交渉もちかけて見逃してもらう、メガテンならではの王道パターンを楽しみ(?)つつ、でも死ぬ時は死ぬんだよなこれが……。

 あまりにも仲魔とバトルが楽しすぎて、話も進めず延々と、ダンジョンと邪教の館を行ったり来たりしちゃうんですが。というのは、本編シナリオにはいろいろと、微妙な部分があるもので……いや、雰囲気そのものは、非常に好きなんですけど。
 ぶっ壊れた東京の、ランドマークだけ残ってる風景とか(新宿南口の「ミニチュア」っぷりには感動した!)、何もない砂だけの世界とか。壊れた世界で、残った人々までもが次第次第に壊れはじめる。理を求めるのか、力を求めるのか。答えのない、空疎な世界で殺戮ばかりが続いてゆく……。
 だけど、全部が「雰囲気」でとどまっていて、その奥の物語を語るところまでは、正直行ってなかったな……というのが、私の印象です。メガテンは元々多弁な物語ではないし、主人公も「はい/いいえ」しか言わない無口くんなんで、寡黙なのはいいのですが、それにしても今回のシナリオは「さわりだけ」と言う印象が抜けません。
 物語の中で登場人物たちが出会い、交錯し、敵対し別れて行く……構成だけ抜き出すと、非常に「いつものパターン」なんですけどね。「再会して変化して」というのではなく、「再会した時には、何か知らんが変化してた」というキャラクターが多すぎで、途中過程でバトルしかしてない馬鹿な主人公(自分だ)は、「ちょ、ちょっと待てっておーい!」と、ひとり取り残された感じになってしまうです。
 結果として壊れている彼らの姿には、割と愛着というか、それはそれで決して嫌いではないものがあるんですけどね。「何でそうなった」という部分を、プレイヤーに考えさせるにしたって、これじゃちょっと段階ぶっ飛ばしすぎ。みんな突然悟り過ぎ。そのくせ、オレ(プレイヤー同化中)に頼りすぎ。
 彼らに賛同するか敵対するかで、エンディングの変わるマルチシナリオなんですけど、このような状況の為、どうもどこにも感情移入がしにくい。なんか曖昧な態度をとっているうちに、なんか曖昧なエンディングにたどり着いてしまう感じで、この点はとてもとてももったいないと思いました。

 キャラクター自体は、そんなに悪くないと個人的には思います。サカハギの「力」にねじ伏せられることで、力への妄執にとりつかれてゆく千晶。無力感と孤独感の間で、「誰も助けてくれない。だからオレも誰も助けない」と決め込んで閉じこもる勇。おそらくは誰よりも感情に揺り動かされてしまうから、感情を否定する氷川。「理想」を求めて奔走し、更に虚ろになってゆく祐子。俯瞰する内に万能感に酔い始める聖……。
 もう少し、その人となりをあらわす台詞とか、変化して行く過程とか、あとはキャラクター同士の葛藤ですね。ほぼ全部のキャラクターが、主人公とのかかわりにおいてつながるだけで、お互いの関係性が全くない(車輪の中央に主人公がいて、車軸のそれぞれの先に各キャラがいる感じ)。ギリギリ、氷川が祐子を断罪するシーンがありましたが、ああいうのがもう少し必要だったんじゃないかな。千晶と勇、勇と祐子、氷川と聖とか、設定的にも関係性の匂うキャラどうしなのに、結局全然生かされてない。
 あとマネカタ。生かすことも殺すこともできてないのは、やっぱりとてももったいない。フトミミもサカハギも、キャラがいいだけに残念です。

 いろんな閉塞感があって、現在のこの世界を、打ち破ろうとしている意志は感じる。「この世界は力を失った」「東京受胎」「新たな世界の創造」。
 けれどそこにひそむエゴイズム。個人と世界。きわめて個人的な世界。そもそも「世界」とは何だ? わたしの知る世界、彼らの知る世界。眼に見ているのは別々の風景。あなたの断罪する世界は、わたしにとっては愛すべきもの。私の憎む世界は、たぶんあなたの理想とするもの。
 受胎した世界。「個人」のレベルで認識・規定された世界。巧妙につかれた嘘。これは「本当」の世界ではない。他者の眼のない世界。
 けれど繰り返される疑問。「世界」とは何だ? 悪魔ならぬ人間の身では、所詮世界は個人の主観意識のレベルでしか認識できない。個人は、個人の世界しかもちえない。個が崩壊すれば、それは世界の崩壊と同じ。
 個の死は世界の死。コトワリ敗れし者は死す。共有の許されぬもの、個は個。世界はひとつ。わたしはあなたになれないし、あなたはわたしになれない。
 ボルテクスこそ世界。個の見る世界。個により生まれた世界。個が死ぬ時、ともに死ぬ世界。……それは我々の知っている、唯一の世界なのかもしれない。

 ふっと、ね。「ノクターン」における、イベントの悪魔たち……トールやゴズテンノウ他、物語に関わってくる悪魔ほど、かつてのシリーズのような強烈な個性を感じないのは、ボルテクス界そのものが「人間により規定されている世界」だからじゃないかな、と思ったりしました。
 人間のレベルでとらえた悪魔。人間が「いる」と信じているから、そこに存在するだけの存在。ボルテクス界が「望む」のをやめたら、あれらは消えてしまうんじゃないかなあ。その程度のレベルで、世界に召喚されてる。その召喚のエネルギーがマガツヒ、という訳です。
 例えばどうもへなちょこな印象の今回のトールにしても、あれはトールという悪魔の「一部」ではあっても、すべてではない。どっかにいるトールという悪魔の「本質」から、召喚されて出て来た影みたいな存在。だから千晶の「望むように」動いて最後は散って行く。
 こう考えると、悪魔はコトワリをひらけないと言う法則も、きちんと符合します。コトワリは人間が作った人間の主観的な世界(個の世界)を規定するルール……インナースペースの宇宙法則であり、個人の生き方を規定するもの。悪魔はそこに召喚されてるだけだから、力は貸せても法則までは左右できない。左右する意味もないでしょう。
 ぼっちゃまだけが、そんな世界をおもしろがってひやかしに来る。子供の姿なのは皮肉でしょうね。「幼い世界だ」と笑ってんのかな、本当は。

 しかしせっかく主人公を悪魔にした割には、展開も全体におとなしめで、ちょっと拍子抜けではありました。ミフナシロの惨劇とか、悪魔のお株を奪う千晶様の活躍っぷりに、完全に迫力で負けてます主人公……。もっとこう、全員皆殺しでオレ様が神になる!みたいな展開はできなかったのかなー、と外道な妄想をしてしまう。だって『デビチル』ですらやってることなのに!←それもどうだろうよ……。
 悪魔がコトワリをひらけない=主人公もコトワリ禁止、というのが何となく、釈然としなかったり。元々は人間なんだしねえ。オレにもなんか、お使い以外のことやらせてくれよ。
 上でだらだらと妄想してた視点から言うと、主人公こそこの「個の世界」ボルテクス界の中で、唯一の「完全な他者」なんだよね。だから自分のコトワリも持てないし、誰に対しても感情移入しづらい構造になってるのかなと。コトワリエンディングを迎えても、まだどっか排除されてるみたいな感じがしちゃうのは、それが借り物の理想だから。
 考えるとそれなりに整合性はとれてて、納得はするんだけど、でもこういう「自分だけ『のけ者』になる」構造を主人公(プレイヤー)に強いるRPGって、ちょっとどうよ? ネタそのものとか、雰囲気はとても好きなんだけど、本質的にどっか「ゲームのシナリオ」じゃないような気がしてしまう、「ノクターン」の世界であります。

 ただ、イベントの映像演出は、びっくりするほどカッコよかった。つーか、趣味。リアル路線でもアニメタッチでもない独特の乾いた空気が、本当にあんまり「他所で見ない」雰囲気を貫いてるんだよね。
 カット回しとか音の使い方とかも、最近の派手系演出RPGの映像と比べても、全然遜色ないように思います。見上げるような巨体の描き方、振り落ちてくる力の迫力。ミフナシロの千晶の神降ろしとか、ギリメカラのコミカルな出現とか、ふっと高みに現れるモイライ三姉妹とか。好きなシーンがいっぱいありました。この路線はまだまだ見てみたいぞ。

 最後に恒例(?)の、お気に入り仲魔について書いてシメます。今回はいろいろ作ったぞー! はじめから狙ってたジャックフロスト、クー・フーリン、ケルベロスのメガテン三大悪魔は言わずもがな、何気なく作った悪魔が変異して、予想以上に長く付き合った……というケースも多かったです。中盤から終盤までお世話になった「チャクラの具足」つきのサティ→パールバティ、「物理吸収」のゴグマゴグ→アルビオン(ぷにぷにで可愛い)。何だか妙に強かったビシャモンテン、こいつがいなかったらギリメカラに勝てなかったなヤタガラス。
 2周目はもう少しスキルを仕込んだこともあって、サキュバス、オーディン、リリス、デカラビアあたりを活躍させておりました。特にリリスは大好きっす。カッコ可愛くてエロい。
 もう1周する暇があったら、今度はケモノ系でまとめたいなあ。バイコーンとかモスマンとか、キウンとか(キウンはケモノか……?)。


つれづれゲームレビュー / ラジカル・ドリーマーズの小部屋