『ラジカル・ドリーマーズ』しゃべりたがり

はじめに〜蘇るクロノの世界

 見たい見たい、と長らく思っていたソフトと、思いがけず出会うことができて、今非常に嬉しい私です。トップページにも書きましたとおり、本当にこんなコンテンツを作ることが出来たのは、いとう様のおかげです。改めて、お礼の言葉を申し上げます。

 さて、噂には聞いておりましたが、ホントにこのゲームってば、『クロノ・トリガー』のモロ続編なんですねー。主人公セルジュ(←これは実はディフォルト名で、勿論自分の好きな名前をつけられます)こそオリジナルキャラですが、他のメイン二人は、実は魔王ジャキと、魔法王国ジールの王女サラの姉弟なんですね。
 魔王の方は、はしばしの言動や描写っから、すぐにぴーんと来るものがあるんですが(ストーリー紹介の方では割愛したけど、戦闘シーンでのギルの戦い方って、結構まんま魔王……。)、キッドの正体については、私は最後の最後までダマされましたね。てっきり、キッドの育ての親「姉ちゃん」の方が、サラだったのかと思ってました。したらそっちは何と、ルッカ!
 ということは……ハッピーエンドで終わったクロノ・トリガーも、それから数年後には、結構ヘビーな展開を迎えていることになるんですね。ルッカの末路もかなりつらいものがありますが、それ以上に気になるクロノとマールの行く末。どうやらあの二人も、無事に結婚まではこぎ着けたようだけど、結局マールは夭逝した、って話になってますね。クロノはその後どうしたのか……たぶん裏設定では何か、あるんじゃないかと思ったんですが、このゲームではそこまで描かれてないみたい。むーん、それも気になるな。
 そもそも、この話の舞台となってる「辺境レジオーナ」も、「パレポリ」が南にある、と言う表現をとられている以上、位置的にはガルディア近辺なんじゃないかと思うんだけど(少なくとも、ガルディア王国と同じ大陸上にはあるはず)、じゃあガルディアそのものはどうなっちゃったんだろう……とか、何か中途半端に気になりますねえ。

「凍てついた炎」ドリストーン

凍てついた炎というのは、おそらくは「クロノ・トリガー」に出てきた「赤い石・ドリストーン」……サラやマールのペンダントや、魔神器や、グランドリオンの材料となったあの石のことだと思うんですが、そういや「クロノ」本編では、結局あの石の正体ってのは、全然語られずじまいだったんですね。その辺が、このゲームで多少、補完されたかなー。
 キッドの過去を語るイベント辺りで、あの赤い石そのものが、なんらかの意志を持つものである、というような表現をされてましたが……ということは、もしかして「クロノ」に出てきた、グラン&リオンとその姉・ドリーンの三姉弟こそが、「凍てついた炎」の「意志」の部分なんじゃないでしょうかねえ。グランとリオンは作中では「グランドリオンの精」って感じにも見えるんだけど、海底神殿のイベントで、魔神器に「あかきナイフ」を突き立てると、グランとリオンの声が響いて、同時にナイフがグランドリオンへと変貌するイベントがありましたでしょう。あのシーンって、「凍てついた炎」を人間が、ラヴォスの力を引き出す魔神器として使うことを、止めに来たというか……凍てついた炎自身が、そういう「使われ方」を許さなかったというような、意味合いがあるんじゃないかと思いましたね。
 で、その同じ意志が、サラをあのまま闇の中に飲み込ませず、あの時代へと転生させたのかなと。そしてその意図ってのも、半分は「救済」だけど、残り半分は「断罪」なのかもなあ。実はサラも、その力を利用されただけの被害者ではあるんだけど、けれど同時に、結局その力が古代世界を壊滅させたっていう、責任があるのも事実なんだよねえ。その辺りをきっちり追及したかったんじゃないでしょうか。凍てついた炎としては。
 つまり、何もせぬまま、あのまま闇に飲まれる=死ぬ、というのでは、ただの逃避にしかならないと。現実をもう一度、見つめなくてはならないのだと、そういうことを言われている気がします。それは確かに、一人で支えて行くにはあまりにも重すぎる責任であり、苦悩ではあるんだけど、それでも自分のしたことからは、逃れることはできないんだぞと……それってすごくつらいし、厳しいことなんだけどね。
 「クロノ」では中途半端に終わってしまったその辺りの点を、もう一度きっちり見直してみたのがこの「ラジカル・ドリーマーズ」なんじゃないでしょうか。「ドリーマーズ」なんてタイトルについているけど、語られているのはものすごく現実的な話。
 こういう「キャラのしたことに対する責任」というのは、RPGでは滅多に問われることがないだけに、非常に新鮮な印象のあったストーリーでした。ある意味、「クロノ」はこの「ラジカル」の存在を受けてこそ、完全に完成される、と言ってもいいかも知れない。

ゲームとしての「ラジカル・ドリーマーズ」

 ただ逆に、ひとつの独立したゲームとしての「ラジカル」はどうか、と言われたら、正直うーん、といった感じですね。「クロノ」をプレイしてなかったら、あんまり意味がないというか。あくまでも「クロノ」の続編、予め「クロノ」をプレイしていることが前提となっているゲームです。まあ、サテラビューでこのゲームをプレイするような人なら、大概「クロノ」もプレイ済みだから、それで充分通用しちゃうんでしょうけど。
 そう言う意味では、やっぱりこの「ラジカル」と「クロノ」を1本のロムにまとめて、PSに移植して欲しかったですね。

 今回の「ストーリー紹介」では、とても紹介しきれませんでしたが、端々の会話に、味のあるものやくすりと笑えるもの、しんみりするものが多くて、サウンドノベルとしては相当、イイ線行っている気がします。やはり加藤正人氏の脚本力か……。多少、クサイところもあったりもするんですが、時折こう、はっと胸を衝かれるような一文が飛び出して来るんですね。
 一番の出色はやはり、オープニングの「おまえはまだ/おぼえているだろうか……?」から始まる一連の語りでしょう。加藤さん本人も、『ゼノギアス』のサントラのブックレットに引用してるぐらいだから、相当気合いが入ってる文章だと思われます。また、それだけの結果を生んでる文章ですよねー。
 この導入部分は、音楽もむちゃくちゃ良くって!途中からアップテンポのメロディに転ずるところが最高ですね。これだけでも泣けますよ……。

つながる音楽の謎

 音楽の話が出たので、ついでにもう一点。『クロノ・トリガー』『ラジカル・ドリーマーズ』『ゼノギアス』の、加藤正人&光田康典コンビの3部作って、どうも音楽的にも、何らかのイメージのつながりが存在しているようです。
 1つは「ラジカル」のサブタイトルであり、メインテーマとなっている「盗めない宝石」が、まんまゼノの曲のタイトルにつけられていること。ゼノの「盗めない宝石」の曲じたいは、ラジカルの曲群とは全く似ていないので、これはたぶん何らかのイメージの継承があるんでしょう。表面には現れない、裏テーマ的な部分で。
 あともう1点は、オルゴールの曲の存在。どういう訳か、この3部作には全部に、オルゴールアレンジの曲が存在していて、しかもそれが全部、重要な意味合いをもつ曲なんですよ。「クロノ」では、クロノとマールのテーマ的な曲として、クロノ復活のシーンで思いっきりかかるし、ラジカルでは作中出てきた「セルジュが昔作った歌」というのが、オルゴールの曲。結局この曲が、キッドを現実に引き戻す訳です。ゼノのオルゴール曲は、シタン先生の家にあった「遺跡から発掘されたオルゴール」の曲。主題歌「SMALL TWO OF PIECES」のインストルメンタルで、シタン先生の「きっとこの曲を好きだった誰かが……」の台詞が、フェイの宿命を暗示するものになってます。
 しかもこのオルゴール曲の場合、クロノでのタイトルが「クロノとマール〜遠い約束」、ラジカルではタイトル不明ですが、ゼノでは再び「遠い約束」というタイトルを付けられてます。「オルゴール曲=”遠い約束”」という法則でもあるんでしょうか……これだけ細部にこだわりがちのスタッフが作った作品ですから、単なる偶然の一致とは考えにくいんですよねえ。何らかの意図はあるような気がします。
 もし今後、また加藤正人氏と光田康典氏が、同じゲームの仕事をすることになったら、その辺りがどうなるのか注目したいところですね。噂じゃ「ゼノギアス2」は相当、難航しているようですけど(制作以前の問題で)、もし始動したら、個人的には一番注目している点です。

附記・ラジカルにおける「凍てついた炎」考

 上段の文章にある通り、凍てついた炎とドリストーンについて、当時の私は簡単に同一のものと考えていたんですが、PS版で「トリガー」をプレイし直して、やっぱり違うような気がしてきました。それも、大幅に。
 情報を整理すると……赤い石・ドリストーンというのは、ラヴォスが降ってくる以前の世界から存在した(恐竜絶滅前に、既にエイラが持ってた)、不思議な力を持つパワーストーン。それからグランドリオンが作られた。
 一方、サラやマールのペンダント(というか、この2つって、タイムパラドックスの結果「2つあるように見えた」だけで、実は本来の歴史上は、1つしか存在しないもののような気もしますが)や、魔神器や、魔神器を壊す為の「あかきナイフ」も、何かの「赤い石」から作られている訳です。どちらも赤い石、そして「あかきナイフ」が「グランドリオン」に変貌して見えた海底神殿のイベントのこともあって、私は両方の「赤い石」を同じものだと判断してたんですが……。
 違うかも知れない、と最近思い始めました。ナイフがグランドリオンに変貌したのは、込められた人の意志・星の意志の表明であって……というかグラン三姉弟というのがたぶん、星に通じる人の願いの「すがた」であり、願いのとおるところにあの三人が生じて力を貸すのが、「グランドリオン現象」の意味合いなんだろうなと。
 んで、「凍てついた炎」なんですが、実はこの石について「ラジカル・ドリーマーズ」作中でも、ちゃんと説明がなされている箇所があるんですよ。随分前に、いとう様からテキスト頂いてたのに、長らくアップもせず放置してしまって……申し訳なかったです、いとうさん。
 クロスも発売されたのに当たって、慌ててここに大公開。今更……すまぬ。

「凍てついた炎というのは、ほんとにただの宝石なの?」
 沈黙だけが、返ってくる……。
 誰も答える気がないのかと思いはじめた頃、ギルが口を開いた。
 低い声が通路にこだまする。
「凍てついた炎は、あらゆる傷をいやし、人に永遠の生命をあたえてくれる聖なる石だ……。
 そう、一部の人間の間では信じられて来た。
 だが実際は、はるか大昔に空から降ってきた、巨大な石の一部なのだ。
 この地上で知られていない力を生み、人の未知の可能性を開く……
 そうした意味では、確かにあの石は偉大なる夢の宝石かもしれぬ。
 ただし、それが人に幸福をもたらすかどうかというのは、また別問題だ。
 過去に多くの人の心を惑わし、一国を滅ぼしたことさえある……。
 今ではその王国の名を、知る者すらいない……」
 ギルの声に、かすかな苦悩の響きがまじったように思えたのは、気のせいだろうか?

 これから判断すれば、「凍てついた炎」というのはおそらく、ラヴォスのかけらということになるのでしょう。「心を惑わされた」のは当然、ここで説明しているギル(ジャキ)の母親・ジール。そうして魔神器やペンダントについても、「凍てついた炎」のかけらでもって作られたのだと考える方が、話としては一貫性がある気もします。欲望と力の暴走のひきがねとなったもの……力を求めるものの心を、歪んだ鏡のようにねじまげて大きく映し返すもの、という。
 だから「凍てついた炎」そのものが「悪」というのではなく、それも扱う人の心次第であり、かけられる意志によっていかようにも(あんまりこういう言い方したくないけど……単純に言えば「善にも悪にも」)なりうるのでしょうが。……その意味では、グランドリオンが「凍てついた炎」製でもいっこう、構わない気はするんですが、作中でばっちし、ラヴォス落下前に「ドリストーン」が出ちゃってるからねえ。
 「ラヴォス」について、いったいどういう種族の生物で、どのような生態をもつのかは全く語られていないのですが、何となくあれって、「鉱物生命体」みたいな気がしてきましたね。すべての星のいのちを吸い取る魔の石。

 では何故「凍てついた炎」は、サラをキッドとして「再生」させたのか、という部分はちょっと難解。というか、あの部分のテキストって、サラを生かした「石」は、「凍てついた炎」だとも、「時の卵」だとも読めるんだよね。画面には延々、凍てついた炎の方のグラフィックが出てるので、つい単純に「凍てついた炎」の方だと思ってたんですが。
 前段の流れ、キッドの「サラとしての覚醒」シーンのつながりから言うと、「時の卵」の方だという気もしてきたな。うーむ。時の卵なら、「生かす」選択をするのはすごい自然。
 「凍てついた炎」がもし、サラをキッドとして生かしたのだとしたら……闇に堕ちることを望んでいたサラの何処かに、まだ「生きたい」意志が残っており、炎はそれをストレートに照らし出したという解釈もできる。それはそれで、私は好き。絶望のなかにのこるひとかけらの希望。執着。まだ死ねないという思い。闇に堕ちて存在を消したところで、おそらく何も終わらないのだと、或いはサラ自身が自覚していたのか……とすると、アカシア竜騎士団生き残りの老人に対しての会話と、リンクもするかな。
 個人的に、なべて「生きるための(みっともないほどの)執着」というのは私は好きで、カッコつけて死ぬ人よりは、じたばた生きる人間のがなんぼか素敵だと思ってたりする。キッドにはそういう、ぎらぎらしたほどの執着が感じられて、その辺りにとても惹かれるんですが……それがサラの底に眠っていたものだとしたら、サラのこともまた何倍も好きになるなー、と改めて思った次第です。


(注1)「あくまでもクロノの続編」
……と、「盗めない宝石編」のリプレイビデオを見ただけで、実際にゲームをプレイしたことのなかった私は思ったんですが、その後実際にプレイした方々の話を聞くと、別にトリガー云々を意識せずとも、「館探索モノ」のサウンドノベルとして、十二分に楽しめるゲームだそうです。ボケのセルジュ、ツッコミのキッド、そしてツッコミに見えて実は大ボケのギルという三バカコンビの珍道中とか。
というか、遊べて当然だっつーの。失礼だよねこの発言。実際にゲームをプレイしたことのないヤツが、見ただけで適当な判断をしちゃイカン、という見本のような文章だな。自分への戒めも込めてここは敢えて残しておく。

(注2)「同じゲームの仕事」
1999年11月18日発売『クロノ・クロス』にその答えが!という訳で。
このレビュー書いた99年1月の時点では、まさかクロノが進行中だなんて、夢にも思ってなかったので、まだ実現しそう(と思われてた)「ゼノ2」への期待、となってます。「ゼノギアス」に関しては、監督の高橋哲哉氏が新会社「モノリスソフト」に移籍なさったので、そちらで制作されるかも。「ゼノ」のタイトルが残るかどうかはともかく。光田さんの公式ページから、モノリスソフトホームページにリンク張ってあったりすると、すごーく気になるよねー。←また決めつけてないか。

(注3)「やっぱり違う」
……と思ったら、やっぱり違わなかった。2000年1月末に発売された『クロノ・クロス アルティマニア』によれば、「ドリストーン=赤き石(魔神器の材料)=凍てついた炎」で正解らしい。あぎゃー、それじゃこの追記自体が意味なかったということに……とほほ。
「ラヴォス落下以前にも、この星に『炎』が落ちて来ていた」ってのも、ちょっとズルくない?と思いつつ、まあその方が情報は整理されるのだった。グランドリオンの件とかね。エイラたちが『炎』を手にしても平気だったのは、ラヴォスの本体……炎の意思がまだ、届いていなかったということなのかしらん。
ただ、ラヴォスが鉱物生命体、という読みはドンピシャだったな(←自画自賛)。鉱物生命体っていうと、私はどうも手塚治虫『火の鳥・望郷編』を思い出します。恐怖のだるま落とし。意味わからない人は、ぜひ一度読んでみて下さいな。無茶苦茶です。いろいろ。


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