「激闘撲滅宇宙刑事編」シナリオリプレイ

燃えはじめた男!

 「凍てついた炎」を求めて、ヤマネコ大君の館へと潜入した、セルジュ、キッド、ギルの三人。
 無人に等しい館内を探索する彼らは、ヤマネコの書斎へと入り込む。古今の書物が山と収められた書斎を、仔細に調べている内に、セルジュはふと、壁の絵に目をひかれた。
 そこには見たことのないような風景が描かれていた。地平線の彼方まで、何処までも続く赤い砂漠。燃えるようなオレンジ色の空。聳え立つ巨大な山々……見つめていると、セルジュは何ともいえない物悲しさのを覚えずにいられなかった。まるで遠い異郷の地に、一人で取り残された流刑者のような孤独感。
 ふと背後を見ると、ギルも同じ絵を見つめていた。セルジュが話しかけても、じっと絵を見つめて動かないギル。

 ボクにはギルが何を考えているのか、普段から良く分からなかった。
 今晩だって、今の今まで、そうだった。
 ……しかし、その時だけははっきりと分かった……

    ギルは、燃えていた。

 マックスウェルの悪魔が、ギルにだけ熱力学第二法則の免罪符を渡したのじゃないかと思えるくらい……
 いや、
 辺りを漂うヘリウムと水素の自由原子が熱核融合を起こし、発生したニュートリノがコップの水でも観測されそうなくらい、

    それはもう、燃えていた。

 彼の表情は、いつもと変わらぬ堅いものだった。
 が、
 …その中に流れるものの温度が一桁は跳ね上がっていた。
「セルジュ、俺にもしもの事があったら、キッドを頼む……」
 え、それってどーゆー?
 そんなボクの愚問が口の端を離れる事は、なかった。
 男には、その血の熱いたぎりのたけをかけて戦わねばならないときがあるのだ。
「ついに、見つけたぞ……」
 ギルは、また壁の赤い絵に見入る。
 その眼差しはこの館の壁を突き破り、天空の父クロノスを射抜かんとするがごとき鋭い輝きに満ちていた。

 燃え上がったギルにあおられ、うっかり自分も熱血モードに入りかけたセルジュを、キッドの容赦ないお仕置き(編み上げブーツの鉄製の踵で殴打。流血。)が見舞う。
 なんとか暴走状態から復帰したセルジュ。だがギルの唐突な炎上の理由はわからない。何しろギルは一人で燃え上がっているのである。その右の拳には、ぶっちがいのブロードソードと『S』の字を2つ重ねて組み合わせた、ナゾの印が青く!浮かび上がっている。

「キッド、セルジュ、もう、鍵の心配はしなくて良いぞ!
ヤマネコが『奴』であったと判った以上、真っ青に燃え轟き叫ぶ俺のこの手を使うのにやぶさかではなくなりはべりいまそがり!」
「ギル……ただでさえ難しい言葉づかいが多いって言われてるから……(^−^;)」

混迷の宝物庫にて

 ともかくも書斎を出た三人は、やがて宝物庫にたどりつく。
 ここに目的の「凍てついた炎」があるのか……?

 ……しゅん!
 いや、実を言うとそんな微かな音すらしなかった。
 青く輝いたギルの右てのひらが触れた瞬間に、厳重に施錠されていたドアの把手付近は、タンスに入れて三年たった防虫剤のようにキレイに消え失せてしまったからだ。
「何だ、ギル。こんな便利な力持ってたなら、さっさと使えば良かったのに……」
 キッドが少し口をとがらせて、宝物庫に滑り込む。
 続いてボクが。
 ギルが扉に開けた穴の縁は鋭利な刃物で斬ったように滑らかだ。
 切り屑のたぐいは一切落ちていない。
「削り取ったモノがどこへ行ってしまうかは、この俺にも判らない」

 ……何か明らかにヤバそうなことを平然と言い放っているギルには、とりあえず関わらずに、ともかく宝物庫内に入るセルジュたち。
 中には大量のお宝が、足の踏み場もないほどぎっしり並べられている。

「あれが惑星タラストの英雄カフールの像、あれが土星のダーマフォスの剥製、グレーレンズに、冬虫夏トリフィド、ライフメーカーの銘板に、クレンダツウのローヤルゼリー、使徒のクリスタル、そっちの、お墓と十徳ナイフを合わせたようなのが惑星ゾラのブルーストーンだ…」
 ……一体、全部判る人間が何人いると思ってるんだ?……ギル……

 お宝なんだかどうだか、訳の分からんシロモノに埋もれて、ついつい漫才トリオな会話ばかりぶちかましていたセルジュたちだったが、遂にキッドが、目的のものを発見した。
 ナゾのお宝<ガラクタ>の間で、真紅のオーラを放って煌めく、美しい宝石を。
 さっそく手を伸ばすキッドを強引に引きとどめ、ギルが「凍てついた炎」の収められた台座を、慎重に削り取る。

 ……ギルが削った台座の中には……片手で凍てついた炎の乗った回転台をクルクル回しながら、もう片方の手で赤いフィルターを付けたバッテラをちかちかと点けたり消したりしていたADが、困ったような顔でボクらを見上げていた。
 タリーが来ていないので、あわてて逃げたりはしない。
「……やはり、この世界の人間用のダミーか」
 またしてもギルが意味深なことを言うが、キッドは聞いちゃいない。
「……てめぇ!本物の凍てついた炎はどこにやった!」
「よせ、キッド。ADはそんな重要な事を普通知らない」
 東洋人の必殺ワザ、アルカイックスマイルを浮かべたADの首すじを締め上げるキッドを、ギルが制する。
 自由になったADはお疲れさまでした、と一声叫び、去って行った。
「…どうやら、本物はどこか別の場所にあるらしいな……」
 ギルがキリリと音を立て、たるんだ場を引き締め直した。

火星大王との死闘

 宝物庫を後にしたセルジュたちの、あてもない(ほんとにね)探索は続く……。
 ガラクタ置場のような部屋に入り込む三人。奥の方から、低い唸り声のような音が聞こえてくるのを気にしたキッドが、先に立って中を調べに行く。
 セルジュは周囲の様子が気になって仕方がない。部屋の奥には大量の機械が備え付けられ、しかも現在も稼動中らしく、そこかしこに蛍火のようなライトが明滅している。何より不安なのは、それら全体が醸し出す雰囲気が、書斎にあったあの赤い絵と、どこか似通っているような印象を受けたのだ。
 セルジュの考えを、キッドの声が中断する。キッドが奇妙な音の出所を発見したのだ。
 それは、背の高い四角い箱だった。正面には両開きの扉がついている。

「なんだ、さんざん期待させといて……こりゃただの冷蔵庫じゃないの?」
 確かに、そう見える。
 ただし、期待したのはキッドの勝手だ。

「お宝じゃないんだったら、どうでもいーや……」
 箱をぱかん、と蹴飛ばすキッド。
 ピピピピピッ!
 蹴飛ばされた瞬間に、箱はけたたましい音を立てながら、二本の脚で『立ち上がった』。
 同時に、例の低い微かな音はうなり声のように高まり……
 箱の両脇に万力のような頑丈な二本の手が、そして、箱の上側にまん丸の巨大な双眼と食いしばった様な巨大な口を持つ真四角の顔が生えた。
 頭の上でリボンの様な格好のパラボラアンテナが、くるくると回っている。
「あは、あはは、はははは」
 余りのアナクロさに時代考証も忘れて笑い転げるキッド。
 と、それが気に障ったのか、箱――ロボットはいきなり胴体の扉をガバと開け、そこから二本のぶっとい筒先を突き出した。
 二門のガトリングガンにかみ合った左右三輪づつの原色の歯車がぎりぎり回り、目を爛々と輝かせたヘビーアー…もとい、ロボットは爆発するような勢いでボクらに向けて撃ち始めた。

 ロボットの一斉射撃を、笑い転げながら器用にかわすキッド。
 そこへすかさず、ギルの必殺攻撃が襲いかかる!

「火星大王の弱点は、ここ、だあーっ」
 気合一閃、岩をも砕く!!!!
 天井近くから飛び降りざまにギルの放った一撃は、見事にロボットの背中の電池ボックス(単二2個)を破壊した!

 なんとか火星大王(という名らしいが、誰もコワくてギルに確かめもしない……)を倒した一行。
 破壊された火星大王の残骸から、ギルが何か白いモノを引っ張り出したのを、セルジュは見逃さなかった。いったい「それ」は、何なのか?
 混迷の探索は続く……。


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