「謎の巨神兵器・パラダイスX編」シナリオリプレイ

文字通りの「横道」に……

 「凍てついた炎」を求めて、ヤマネコ大君の館に侵入したセルジュたち。今やその探索行も、終盤に差しかかっているようだった。
 宝物庫の罠、奇妙なゴブリン警備隊長エスメルドとの出会い、ヤマネコの養女リデルの嘆き、白き聖剣イルランザー……そしてついにセルジュたちは、最後の扉をひらくキーワードを手に入れた。「地の扉」を起動させる為の鍵である。
 あとはもう「凍てついた炎」との、直接の対面を残すのみ……だが、「地の扉」を擁する大広間へと向かうその前に、三人はもう一度、ヤマネコ大君の私室を訪れてみた。
 ヤマネコ大君の部屋に置かれている、精霊の宿った魔法の鏡「囁きの鏡」を覗き込むセルジュ。すると鏡には、この部屋の壁際の風景が映し出されたのである。
 何かあるのか、とその壁を調べてみる三人。押せど叩けど蹴り飛ばそうと、まるで反応はなかったのだが……

 と、キッドが小机になる羽ペンに目をとめる。
「くすぐってみるか?」
 キッドは羽ペンを手にとり、壁をそっとなでてみた。
 すると固い壁がぐにゃりと、よじれた。
「わ!!なんだ、なんだ?」
 飛びのくキッド。
 低い、クククッという声が、壁の方から聞こえてくる。
「この壁、笑ってる!?」
「どれ……」
 キッドは、おそるおそる壁に近づいて、再び羽根ペンで、壁をこちょこちょ、くすぐる。
 身をよじるように、壁が震え……
 ぱっとはじけたように大きく波打つと、一角が、砂になって床に流れ落ちた。
 あとには、ちょうど人が通れるくらいの穴があいていた。

 奇怪な「隠し扉」を潜り抜け、内部に入るとそこは、殺風景な広間のような場所だった。家具も窓も何もない、がらんとした、地下牢のような空間……ただその中央に、大きな石版が一枚、据えてあった。
 石版の上にのぼって、調べてみるキッドとセルジュ。石版の中心に、大ぶりの水晶が埋め込まれているのが、目を惹く。

 水晶は石版の中央に埋め込まれていた。
 球状に磨かれているらしく、石版の表面に、半分だけ姿を現している。
 石版には、見たこともない文字がびっしり書き込まれているが、水晶の周りの部分は文字で円形に取り囲まれている。
「きれいな水晶だね」
「ああ、こいつは相当な値打ちもんだ、大きさといい、輝きといい。いただきだな」
 そう言って、キッドは水晶に手を伸ばした。
 キッドの手が水晶に触れた。
 そのとき……一瞬、水晶が光ったように見えた。
 目の前が真っ白になって……

 目を開けると、そこは闘技場だった!?

謎の幻術師ガンジュ

 いったいどういう罠なのだろう。セルジュとキッドは、いきなり真っ昼間のコロシアムに立ち尽くしていたのだ。
 古代ローマで、剣闘士と猛獣が戦ったりした闘技場、そのものの空間である。客席はからっぽ、フィールドにも誰もいない。ただ太陽だけがさんさんと照り注いでいる。
 どうやらあの隠し部屋の水晶には、触れられた時に石版の上にいた者を、この空間へ転送する魔法がかけられていたようである。その為、石版から離れた所で部屋を調べていたギルは、ここには来ていない。
 おそらくこの場所は、現実には存在しない、幻の空間なのではないか、とキッドが推察してみせる。と、その時、コロシアムの入り口から、突如何者かの笑い声が聞こえてきた。

 ボクは、人影に向かって走り出そうとした。
 しかし、体が動かない。
「くっ…」
 キッドも、自由に体が動かないようだ。
「まあ、そう慌てないで、私の話を聞いて下さい。
 まずは自己紹介。私は幻術師のガンジュといいます。そしてここは、お嬢さんのおっしゃる通り、幻界。どこにもない空間でございます」
 そう言うと、幻術師ガンジュと名乗った人影は、人の背丈ほどの高さまで浮いた。
「このコロシアムは、戦いの場。勝者のみが、現実界に戻ることが出来るのです」
「!!」
「つまり今回は、あなたとあなた」
 そう言って幻術師ガンジュは、ボクとキッドを指さした。
「お二人が、互いに敵となり戦っていただくことになります」

 勝った方だけが、現実に戻れる……唐突すぎる言葉に戸惑うセルジュと、怒るキッド。
 そんなまどろっこしい話に、付き合う義理はない。貴様を倒し、幻界そのものを消せばいい、と息巻くキッドに対して、ガンジュは謎めいた言葉をつぶやく。
「私は真に強き者を探している……」
 謎めいた言葉に意表を衝かれた瞬間――有無を言わさず、戦闘開始が告げられる。コロシアムに響き渡る、姿の見えない「満員の大観衆」の、盛大な歓声。

「お互い、その格好のままだと戦いづらいでしょう。二人とも変身しましょう。
 それでは今日の見せ物は、
 『剣奴セルジュ対巨神兵器キッド』
ということでいきます。それでは!」
 幻術師ガンジュはそう言って姿を消した。
「いったいどうなって…………ぐっ」
 急にキッドの体が白く光りだした。
「グアァァァァァァァァァァ……」
 そして、白い発光体と化したキッドの体はどんどん大きくなっていった。
 そして、光がやんだときそこに居たのは屈強な肉体を持った、一つ目の巨神だった。

 対するセルジュもどういう訳か、剣と楯を構えた剣奴の姿に変身している。
 姿の見えないガンジュの声が、平然と戦闘開始を告げる。
 どうしていいのか分からないまま、とりあえず、巨神と化したキッドに向かって声をかけてみるセルジュ。
 ……返答はなかった。
 代わりに、巨神の巨大な拳が、セルジュ目掛けて振り下ろされたのだ!
 必死に逃げ回るセルジュ。何とか説得して、戦いをやめようとするが、そもそも「キッド」にはセルジュの声が聞こえていないようだった。攻撃的な光を目に宿らせ、容赦ない打撃がセルジュを吹っ飛ばす。

「キッド………もうやめよう……」
 ボクは剣と盾を、地面になげ捨てた。
「キッド!!もうやめよう!!」
 両手を大きく広げて、戦意のないことを示しながら叫ぶ。
 ボクは、巨神の顔をしっかりと見据え、必死に訴えた。
 巨神に殴られたとき出来た傷が痛むが、ぐっとこらえて、にらみつける。
 しかし、巨神は攻撃をやめようとしない。
 その巨大な一つ目でボクを見おろすと、鋭いパンチを振り下ろす。
「だめだ……」
 もう避けられなかった。
 ボクは、目を閉じ、体をこわばらせた。
     グガシッィ
「な、ど、どうして!?」
 巨神のパンチはボクにとどかなかった。
 そのこぶしは、ボクの前で止まっていた、……いや、受けとめられていた。
「ギル!!」
 ギルが、ボクの目の前に立ちはだかって、巨神のこぶしを受けとめてくれたのだ。
「ギル、どうして!?」
「無茶なことをするな。命は大切にしろ」
「でも、こいつはキッド……」
「わかっている、ここは俺にまかせろ」
 ギルにそう言われて、ボクは体中から力が抜けていくような気がして、その場にへたりと座り込んでしまった。

 「三人目」の登場に驚いたのは、セルジュだけではなかった。幻術師ガンジュにとっても、意外な出来事だったようだ。突然姿を現すと、一方的に試合の終了を宣言した。
 とたんに巨神の姿はかき消え、意識を失ったキッドがフィールドに倒れる。ほっとするセルジュに対して、ガンジュは自分を一緒に連れて行って欲しい、と頼み込む。

「連れていって下さい、といっても私がそのままついていくわけではありません。現実界に帰ったら石版の中央にある水晶を抜き取って、持ち歩いて下さい。もし持ち歩いて下さるなら、あなたがたが、必要になったとき、水晶に命じて下されば、巨神兵器をあなたがたのしもべとして使わします。
それでは、現実界におかえししましょう。もちろん三人とも」
 そう幻術師ガンジュが言うと、目の前が真っ白になった。
 そして気がつくと、もとのヤマネコの部屋の隠し部屋の中にいた。

 隠し部屋で意識を取り戻したキッドは、幻界でのことは何も覚えていない様子だった。
 一段と輝きを増して石版の上に煌めく水晶に、初めて目にしたもののような歓声を上げる。そうしてさっさと水晶を取り外して懐に入れると、部屋を出て行ってしまった。
 不思議に顔を見合わせつつも、後を追うセルジュとギルであった……。


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